クロノス広報チーム
月末や締め日前後になると、勤怠データの確認や集計に多くの時間を費やしている人事労務担当者も少なくないのではないでしょうか。特に、残業時間や深夜労働時間の集計に加え、変形労働時間制やフレックスタイム制などの複雑な労働時間制度を採用している企業では、勤怠の確認や計算にかかる作業の負担が大きくなりがちです。しかし、勤怠計算は給与計算の基礎となるだけでなく、長時間労働の防止や健康管理、法令遵守の観点からも欠かせない重要な業務です。
本記事では、勤怠計算の基本的な計算方法、労働時間制度ごとの計算のポイントや注意点まで、要点を整理しながら解説していきます。
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勤怠の基本的な計算方法とは?
勤怠管理の方法によって、労働時間の集計や勤怠管理の手間などは大きく異なります。
特に、残業時間や休暇管理を正確に行うためには、自社の運用や勤務形態に適した方法を選ぶことが大切です。ここからは、電卓やExcel、勤怠管理システムなど、代表的な勤怠の計算方法について解説していきます。
電卓を用いて計算する場合
タイムカードや出勤簿、勤怠日報などに記録された出退勤時刻をもとに、電卓を用いて労働時間や残業時間を集計する方法です。小規模な事業所や従業員が少ない企業では、勤怠記録を紙や簡易的なツールで記録し、その内容を担当者が計算する場合があります。
電卓で計算を行う場合、出退勤時刻から休憩時間を差し引いて実働時間を算出します。その後、実働時間を日ごとに集計し、1か月分を合計することで総労働時間を算出します。さらに、所定労働時間を超えた時間や深夜労働時間、休日労働時間などを区分して集計し、給与計算に反映します。
この方法は、特別なシステムなどを必要としないため導入しやすい反面、手計算になることにより集計作業に手間がかかり、従業員数が増えるほど人事労務担当者の負担が大きくなります。
Excelで管理する場合
Excelで計算を行う場合、タイムカードや出勤簿などに記録された出退勤時刻をExcelへ入力し、そのデータをもとに集計します。Excelにあらかじめ関数や計算式を設定しておくことで、入力された勤怠データをもとに実労働時間や残業時間を計算することが可能です。
例えば、以下のような勤務をした場合、実労働時間や残業時間は次のように計算されます。
| 項目 | 入力内容 |
|---|---|
| 出勤時刻 | 9:00 |
| 退勤時刻 | 19:00 |
| 休憩時間 | 1時間 |
| 所定労働時間 | 8時間 |
| 実労働時間 | 19:00 - 9:00 - 1時間 = 9時間 |
|---|---|
| 残業時間 | 9時間 - 8時間 = 1時間 |
この場合、実労働時間は9時間、時間外労働は1時間となります。
Excelでは関数や計算式を設定することで、実労働時間や時間外労働を計算できますが、出勤時刻や退勤時刻などの勤怠データを手作業で入力するケースも多く、入力ミスや関数設定の誤りがあると集計結果にも影響を与える可能性もあります。
紙のタイムカードや出勤簿などを利用している場合は、打刻された時間を確認しながら勤務時間を計算し、月ごとの労働時間や残業時間を手作業で集計しなければなりません。
遅刻や早退、欠勤が発生した際は、その内容も踏まえて個別に計算を行う必要があるため、従業員数が多ければ多いほど集計作業に時間がかかりやすく、人事労務担当者の負担が大きくなる傾向があります。
さらに、打刻漏れの見落としや転記ミスといったヒューマンエラーが発生する可能性もあり、月末や締め日前後に集中的な確認作業が発生しやすいため注意が必要です。
勤怠管理システムを導入している場合
勤怠管理システムを導入している場合は、パソコンやスマートフォン、ICカードなどで記録した勤怠データをもとに、実労働時間や残業時間などをシステム上で自動集計できます。
そのため、紙のタイムカードやExcelによる管理と比べて、転記や集計にかかる手間を大幅に削減できます。一方で、システムの導入費用や利用料が発生するほか、自社の就業規則や勤務形態に合わせた初期設定が必要になる点には注意が必要です。
分を小数点に変換する場合
給与計算では、労働時間を時間単位で計算するため、分単位の勤務時間を小数に変換して扱うことがあります。特に、働いた賃金の計算においては、労働時間に賃金単価を掛けて算出することが多いため、勤務時間を小数で管理することで計算がしやすくなります。
たとえば、実労働時間が8時間30分の場合、そのまま「8.30時間」とするのではなく、分単位の勤務時間である「30分」を「60」の値で割って変換します。
【計算例】
| 実労働時間 | 8時間30分 |
|---|---|
| 小数への変換 | 30分÷60 = 0.5時間 |
| 変換後の労働時間 | 8時間 + 0.5時間 = 8.5時間 |
同様に、15分であれば「15÷60=0.25時間」、45分であれば「45÷60=0.75時間」となります。1時間は60分のため、分単位の勤務時間を小数へ変換する際は、必ず60を基準に計算する必要があります。
このような小数変換は、給与計算システムとの連携時にも活用されます。
労働時間の管理や、タイムカード上の表示では「4:30」や「13:00」などのような60進法による表記が一般的ですが、給与計算システムによっては10進法の値を前提としているものもあります。その場合は、集計した勤怠データを給与計算へ連携する際に、時間を小数に変換して計算を行います。
また、時給1,200円の従業員が8時間30分勤務した場合は、「1,200円×8.5時間=10,200円」のように給与を算出できます。このように、勤務時間を小数へ変換することで、給与などの金額の計算を簡単にできるようになります。勤怠管理システムでも、給与計算との連携時に小数変換された時間を基準に計算を行う場合があるため、労働時間の表記方法の違いを理解しておくことで、どのような計算が行われているのか把握しやすくなります。
15分単位での勤怠管理は違法!必ず1分単位で計算する必要がある
実際に労働した時間を15分単位や30分単位で切り捨て、労働時間を少なく計算することは原則として認められていません。労働時間は、従業員が実際に働いた時間をもとに把握する必要があり、原則として1分単位で集計することが求められます。
なかには、日ごとの労働時間を「15分単位で集計する」「15分未満を切り捨てる」といった運用を行っている企業もあります。しかし、このような処理によって実際の労働時間より少なく集計してしまうと、未払い賃金が発生する可能性があります。
また、始業前の準備や終業後の片付けなど、使用者の指揮命令下で行われた業務は労働時間に該当するため、適切に把握しなければなりません。労働時間を正しく集計していない場合、労使間のトラブルや労働基準監督署からの指摘につながるリスクもあるため、注意が必要です。
残業時間を月単位で計算する場合は端数処理が可能
労働時間は原則として1分単位で計算する必要がありますが、時間外労働や休日労働、深夜労働の時間を1か月単位で集計する場合に限り、例外として端数処理が認められています。
具体的には、1か月分を集計した結果として生じた端数について、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることが可能です。
ただし、この取り扱いは行政上認められている例外措置であり、日ごとの労働時間に対する端数処理を認めるものではありません。認められているのは、あくまで1か月分の時間外労働や休日労働などを集計した後に生じた端数です。
日ごとの労働時間を切り捨てる運用を行うと、未払い賃金の発生や労働基準監督署からの指摘につながる可能性があるため、端数処理を行う場合は、日々の労働時間を実際の労働時間通りに集計したうえで、月単位の集計時のみ認められた範囲内で行うようにしましょう。
勤怠計算を行う際の残業や深夜労働に関する注意点
勤怠計算では、労働時間を集計するだけでなく、残業時間や深夜労働時間などを正しく把握し、計算することが重要です。残業や深夜労働には法令で定められたルールがあり、計算方法を誤ると思わぬトラブルにつながるリスクもあります。
ここからは、勤怠計算を行う際に押さえておきたい残業時間や深夜労働時間に関する注意点を解説していきます。
関連リンク:残業代の計算方法|基本の計算式や割増率についてわかりやすく解説
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残業時間に関する注意点
残業時間を計算する際は、法定時間外労働に該当する時間を正しく把握することが重要です。
集計方法を誤ると、割増賃金の未払いや労使トラブルへつながる可能性もあります。
まず注意したいのが、企業が定める「所定労働時間」を超えた時間と、労働基準法で定められる「法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)」を超えた時間では扱いが異なる点です。
たとえば、所定労働時間が1日7時間30分の企業で8時間勤務した場合、30分は所定労働時間を超える労働となります。しかし、法定労働時間である8時間は超えていないため、この30分は法定時間外労働には該当しません。一方で、実労働時間が8時間30分となった場合は、8時間を超えた30分が法定時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要になります。
また、残業時間は日単位だけではなく、週単位でも確認する必要があります。1日の労働時間が8時間以内であっても、1週間の労働時間が40時間を超えた場合は法定時間外労働に該当するためです。
さらに、時間外労働を行わせるためには、原則として36協定の締結が必要です。残業時間の集計は、割増賃金を正しく計算するためだけでなく、36協定で定めた時間外労働の上限を超えていないかを確認するうえでも重要な業務といえます。
残業時間の集計方法に誤りがあると、未払い残業代の発生につながるリスクもあります。実際より多く残業時間を計上してしまった場合には、人件費の増加につながることもあるため、適切に管理することが大切です。
深夜労働に関する注意点
深夜労働が発生した場合は、残業の有無にかかわらず、深夜割増賃金を支払う必要があります。そのため、勤怠計算では労働時間だけでなく、勤務した時間帯も正確に把握することが重要です。
労働基準法では、原則として22時から翌5時までの時間帯に行われた労働を深夜労働と定めています。この時間帯に労働させた場合は、通常の賃金に加えて25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
注意したいのは、深夜労働は時間外労働とは扱いが異なる点です。たとえば、14時から23時まで勤務した場合は、法定労働時間を超えていなかったとしても、22時から23時までの1時間は深夜労働に該当するため、この1時間については深夜割増賃金の支払いが必要です。
また、時間外労働と深夜労働が重なった場合は、それぞれの割増率を加算して計算しなければなりません。たとえば、法定労働時間を超えた勤務が22時以降まで続いた場合、その時間は時間外労働と深夜労働の両方に該当します。そのため、時間外労働に対する割増率25%以上と深夜労働に対する割増率25%以上を合わせ、50%以上の割増賃金を支払う必要があります。
特に、夜勤や交替制勤務を採用している企業では、深夜労働が発生しやすいため、勤務時間帯を正確に記録することが重要です。勤務が日付をまたぐ場合や深夜時間帯に休憩を取得した場合は、実際の深夜労働時間を正しく把握したうえで集計を行うようにしましょう。
勤怠計算の流れ
勤怠計算を適切に行うためには、残業時間や深夜労働時間の算出など、一連の流れを正しく理解することが大切です。ここからは、勤怠計算の基本的な流れを確認しながら、計算方法や押さえておきたいポイントについて説明します。
①労働時間の計算
勤怠計算を行う際、まず労働時間を正しく算出する必要があります。労働時間は、出勤時刻から退勤時刻までの時間から休憩時間を差し引いて算出します。
●計算式
労働時間 = 退勤時刻 - 出勤時刻 - 休憩時間
【計算例】
- ・出勤時刻 9:00
- ・退勤時刻 18:00
- ・休憩時間 1時間
●労働時間の計算
18:00 - 9:00 - 1時間 = 8時間
この場合、労働時間は8時間となります。
労働時間を算出する際は、休憩時間を適切に反映することが重要です。休憩時間を差し引かずに集計すると、実際の労働時間より多く計算されてしまいます。また、労働時間はその後の残業時間や深夜労働時間、休日労働時間の算出にも影響するため、出退勤時刻や休憩時間を正確に管理することが大切です。
②法定外残業時間の計算
法定外残業時間とは、労働基準法で定められた法定労働時間(原則として1日8時間、週40時間)を超えて働いた時間のことです。割増賃金の計算や法令遵守の観点からも、正確に把握することが求められます。労働時間を集計した後は、法定外残業時間に該当する時間があるかを確認します。
●計算式
法定外残業時間 = 実労働時間 - 法定労働時間
【計算例】
- ・出勤時刻 9:00
- ・退勤時刻 19:00
- ・休憩時間 1時間
●労働時間
19:00 - 9:00 - 1時間 = 9時間
●法定外残業時間の計算
9時間 - 8時間 = 1時間
この場合、法定労働時間である8時間を1時間超えているため、法定外残業時間は1時間となります。法定外残業時間を計算する際は、所定労働時間と法定労働時間を混同しないよう注意が必要です。
たとえば、所定労働時間が7時間30分の会社で8時間勤務した場合、30分は所定労働時間を超える労働となりますが、法定労働時間は超えていないため、法定外残業時間には該当しません。
また、法定外残業時間は実労働時間をもとに算出するため、出退勤時刻や休憩時間の記録を正確に管理することが重要です。実労働時間の集計に誤りがあると、法定外残業時間を正しく把握できず、割増賃金の計算や給与計算に影響を与える可能性があります。
③深夜労働時間の計算
深夜労働時間は、残業の有無にかかわらず、22時から翌5時までの時間帯に勤務した時間を集計します。法定労働時間を超えていない場合でも、この時間帯に勤務した時間は深夜労働として計算しなければなりません。また、深夜労働に該当する時間については、通常の賃金に加えて25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
【計算例】
- ・出勤時刻 14:00
- ・退勤時刻 23:00
●深夜労働時間 = 深夜時間帯(22時~翌5時)に勤務した時間
22:00 ~ 23:00
この場合、22時から23時までの1時間が深夜労働に該当します。
深夜労働時間を計算する際は、総労働時間だけでなく、どの時間帯に勤務したかを正確に把握することが重要です。
④休日労働時間の計算
休日労働時間は、法定休日に勤務した時間を集計して算出します。法定休日に労働した場合、通常の賃金に加えて35%以上の割増賃金を支払う必要があるため、勤務時間を正確に把握することが重要です。
【勤務例】
- ・法定休日の日曜日に勤務
- ・出勤時刻 9:00
- ・退勤時刻 18:00
- ・休憩時間 1時間
●休日労働の計算
18:00 - 9:00 - 1時間 = 8時間
この場合、休日労働時間は8時間となります。
休日労働を集計する際は、まず勤務した日が法定休日に該当するかを確認する必要があります。同じ休日労働であっても、その日が法定休日なのか会社が定める所定休日なのかによって、割増賃金の取り扱いが異なるためです。
休日に勤務した場合でも、その日が法定休日ではなく、会社が独自に定めた所定休日であれば、直ちに休日労働となるわけではありません。
たとえば、週休2日制の企業では、「日曜日を法定休日、土曜日を所定休日」としている場合があります。この場合、土曜日に勤務しても法定休日労働には該当せず、休日労働に対する35%以上の割増賃金の対象にはなりません。ただし、労働時間数によっては時間外労働として割増賃金が発生する場合があります。
また、休日労働時間を正しく算出するためには、出退勤時刻や休憩時間を正確に記録することが重要です。出退勤時刻や休憩時間の記録に誤りがあると、休日労働時間を正しく集計できず、割増賃金の計算にも影響を与え、その後の給与計算に影響する可能性があります。
さらに、法定休日の勤務が22時から翌5時までの深夜時間帯に及んだ場合は、休日労働と深夜労働の両方に該当します。そのため、休日労働時間と深夜労働時間をそれぞれ集計したうえで、割増賃金を計算する必要があります。勤務が深夜に及ぶケースでは、労働時間だけでなく勤務時間帯も確認しながら集計を行うことが重要です。
休日労働時間は、給与計算だけでなく、企業の適切な労務管理を行ううえでも重要な項目です。勤務した日が法定休日なのか、所定休日なのかを事前に確認し、正確な勤怠記録に基づいて集計を行うようにしましょう。
⑤一か月分の労働時間・法定外残業時間・深夜労働時間・休日労働時間を集計
日ごとに算出した労働時間や法定外残業時間、深夜労働時間、休日労働時間は、月単位で集計して、勤務実績を確定させます。月次集計は給与計算の基礎となるだけではなく、従業員の労働時間を把握するために重要な作業です。
●集計項目
- ・月間労働時間=当月に勤務した労働時間の合計
- ・月間法定外残業時間=当月の法定外残業時間の合計
- ・月間深夜労働時間=当月の深夜労働時間の合計
- ・月間休日労働時間=当月の休日労働時間の合計
●集計例
- ・月間労働時間:172時間
- ・月間法定外残業時間:15時間
- ・月間深夜労働時間:4時間
- ・月間休日労働時間:8時間
月次集計では、上記の時間をそれぞれ算出し、勤務実績に誤りがないかを確認します。その後、各勤務区分に応じた割増率を適用して割増賃金を算出します。
月次集計を行う際は、法定外残業時間、深夜労働時間、休日労働時間をそれぞれ区分して集計する必要があります。たとえば、法定休日の勤務が22時以降まで及んだ場合は、休日労働時間と深夜労働時間の両方に該当するため、それぞれの時間を集計しなければなりません。
また、集計前には出退勤時刻や休憩時間の記録内容に誤りがないかを確認することも重要です。記録に不備があると、労働時間や各勤務区分の集計結果にも影響するため、正確な勤怠データに基づいて集計を行う必要があります。欠勤や遅刻、早退がある場合は、その内容もあわせて確認しましょう。
さらに、締め日をまたぐ勤務が発生する場合は、どの月の勤務実績として取り扱うのかを事前に定めておく必要があります。特に夜勤や交替制勤務では勤務が日付をまたぐケースもあるため、自社のルールに沿って集計することが求められます。
月次集計は単に労働時間を合算するだけでなく、勤務区分ごとに正しく整理しながら集計することが重要です。日々の勤怠データを正確に記録し、月末に適切な確認を行うことで、正確な勤務実績の把握と給与計算につながります。
多様な労働時間制度を導入している場合の勤怠の計算方法
労働時間の計算方法は基本的に共通していますが、変形労働時間制やフレックスタイム制など、多様な労働時間制度を導入している場合は、労働時間の管理方法や残業時間の考え方が異なります。正確な勤怠計算を行うためにも、それぞれのルールを理解しておきましょう。
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変形労働時間制の場合
変形労働時間制は、特定の日や週の労働時間を長く設定する代わりに、一定期間を平均して法定労働時間の範囲内に収める制度です。そのため、通常の「1日8時間、週40時間を超えると法定外残業時間」という考え方とは異なり、あらかじめ定められた勤務シフトや労働時間を基準に法定外残業時間を計算します。
●計算例
【4月(30日)の場合】
- ・月の法定労働時間:171.4時間
| 週 | 所定労働時間 | 実労働時間 |
|---|---|---|
| 第1週 | 35時間 | 37時間 |
| 第2週 | 40時間 | 42時間 |
| 第3週 | 45時間 | 45時間 |
| 第4週 | 45時間 | 52時間 |
| 合計 | 165時間 | 176時間 |
所定労働時間とは、変形労働時間制においてあらかじめ定められた各週の労働時間です。
変形労働時間制では、繫忙期と閑散期に合わせて週ごとの所定労働時間を変更できます。
この場合、対象期間の実労働時間は176時間となり、4月の法定労働時間である171.4時間を4.6時間上回っています。
変形労働時間制では、あらかじめ設定された労働時間の枠組みや対象期間全体の労働時間をもとに時間外労働を判定するため、実労働時間が法定労働時間の範囲内に収まっているかを確認する必要があります。よって、この月単位の法定労働時間を超えた4.6時間が、法定外残業時間として扱われます。
また、変形労働時間制では、所定労働時間を超えているかどうかだけではなく、法定労働時間の範囲内に収まっているかどうかを確認することも重要です。法定外残業時間の判定は月単位だけでなく、日単位や週単位の基準も考慮して行う必要があります。
月の法定労働時間は月の日数によって異なるため、同じ実労働時間数であっても月によって法定外残業時間の有無が変わる場合があります。さらに、変形労働時間制を導入していても、22時から翌5時までの深夜労働や法定休日における労働については、別途賃金の支払いが必要です。法定外残業時間だけではなく、深夜労働時間や休日労働時間も区別して管理する必要があります。
変形労働時間制では、一部の週や日に労働時間が長くなっていても、あらかじめ定められた範囲内であれば直ちに法定外残業時間になるとは限りません。
そのため、週ごとの実績だけで判断するのではなく、対象期間全体の労働時間を集計したうえで、法定労働時間の範囲内に収まっているかを確認する必要があります。
事業場外みなし労働時間制の場合
事業場外みなし労働時間制とは、営業職の外回りや出張など、会社の外で業務を行い、使用者が実際の労働時間を把握することが難しい場合に適用される制度です。
一定の要件を満たす場合は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたものとみなして労働時間を計算します。そのため、通常の勤怠管理のように打刻時間から労働時間を算出するのではなく、「みなし労働時間」を基準として労働時間を管理する点が特徴です。
【勤務実績とみなし労働時間の関係の例】
- ・みなし労働時間:9時間
- ・実際の労働時間:8時間
▶労働時間
9時間
この場合、実際の勤務時間に関わらず、1日9時間勤務したものとして扱われます。
事業場外みなし労働時間制では、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定められたみなし労働時間を基準に勤怠計算を行います。
また、みなし労働時間が法定労働時間である1日8時間を超える場合は、超過した時間について法定外残業時間として取り扱う場合があります。そのため、みなし労働時間は実際の業務内容に見合った時間を設定することが大切です。
近年は、スマートフォンやGPSなどの活用により従業員の行動状況を把握できる方法も増えてきています。会社が具体的な労働時間を把握できる場合は、事業場外みなし労働時間制を適用できないこともあるため、制度の適用要件を確認する必要があります。
フレックスタイム制の場合
フレックスタイム制とは、一定期間(清算期間)の総労働時間をあらかじめ定め、その範囲内で従業員が日々の始業時刻や終業時刻を柔軟に決められる制度です。そのため、通常の労働時間制度のように1日ごとの労働時間ではなく、清算期間全体の労働時間を基準に法定外残業時間を判定します。
フレックスタイム制では、日によって労働時間にばらつきが生じても問題ありません。清算期間終了時点で総労働時間を集計し、法定労働時間の範囲内に収まっているかを確認する必要があります。
【4月(30日)の場合】
- ・清算期間:1か月
- ・月間実労働時間:180時間
4月の法定労働時間は以下の計算式で求められます。
法定労働時間 = 40時間 × 30日 ÷ 7日 = 171.4時間
- ・法定外残業時間の計算
180時間 - 171.4時間 = 8.6時間
この場合、法定労働時間である171.4時間を8.6時間超えているため、超過した8.6時間が法定外残業時間となります。
フレックスタイム制では、ある日に10時間勤務したとしても、すぐに法定外残業時間として扱われるわけではありません。法定外残業時間については日ごとの労働時間ではなく、清算期間全体の労働時間を集計し、法定労働時間を超えているかどうかによって判断されます。
そのため勤務時間に日ごとのばらつきがあっても、清算期間全体で法定労働時間の範囲内に収まっていれば、法定外残業時間は発生しません。また、法定労働時間は月の日数によって変動するため、同じ実労働時間であっても月によって法定外残業時間の有無が異なります。さらに、フレックスタイム制を導入していても、深夜労働や法定休日労働に対する割増賃金の支払いは必要となるため、法定外残業時間とは別に深夜労働時間や休日労働時間も管理しなければなりません。
勤怠計算を行う際におすすめのツール
勤怠計算を正確かつ効率的に行うためには、適切なツールを選ぶことも重要になります。電卓やExcel、勤怠管理システムなどにはそれぞれ特徴があるため、自社の運用に適した方法を選びましょう。
電卓
電卓は、労働時間や残業時間を手計算する際に利用するツールです。タイムカードや出勤簿などに記録された出退勤時刻をもとに集計を行う場合に用いられることが多く、システムを導入する必要がないため、従業員数が少ない事業所や簡易的な集計に適している方法です。
一方で、労働時間や残業時間、深夜労働時間、休日労働時間をすべて手作業で計算しなければならないため、人事労務担当者の負担が大きくなりやすいです。
ヒューマンエラーが発生する可能性もあるため、定期的に計算結果を確認しながら進めることが大切です。
エクセル
Excelは、関数や計算式を利用して労働時間や残業時間を集計できるツールです。電卓による手計算と比べると集計作業を効率化しやすく、関数や数式を設定することで勤務時間や残業時間を自動的に算出できます。
一方で、勤怠ルールが複雑になるほど関数や数式の設定が複雑になり、運用やメンテナンスの負担が大きくなるというデメリットがあります。また、数式の入力ミスや設定漏れが発生すると、集計結果や給与計算に影響する可能性があるため注意が必要です。
さらに就業規則の変更や法改正が発生するたびに、関数や計算式の見直しを行わなければなりません。Excelによる勤怠管理は、従業員数が多い企業や、変形労働時間制、フレックスタイム制などの複雑な労働時間制度を導入している企業では管理が煩雑になりやすく、設定や運用に多くの工数がかかる場合があります。
勤怠管理システム
勤怠管理システムを導入すると、打刻データをもとに労働時間や残業時間、深夜労働時間、休日労働時間などを自動で集計できます。
勤怠計算を効率化できるだけでなく、法改正への対応や複雑な就業規則へ対応できる製品も多く、業務負担を軽減しながら正確な勤怠管理を実現しやすい点が特徴です。
また、給与計算システムとのシステム連携が可能な場合は、集計した勤怠データを給与計算へ反映できるため、人事労務担当者の転記や集計作業の業務負担の軽減にもつながります。
一方でデメリットとして、導入時の初期費用や、クラウドサービスの場合は月額利用料などのコストが発生する点が挙げられます。また、自社の就業規則や運用ルールに合わせた初期設定にも一定の手間がかかります。
しかし、従業員数が多い企業や、複雑な勤務形態で運用している企業では、手作業によるヒューマンエラーの防止や人事労務担当者の負担軽減につながるため、長期的な業務効率化や管理精度の向上が期待できます。
まとめ
勤怠計算は、労働時間や残業時間、深夜労働時間などを正確に把握し、適切な労務管理や法令遵守を実現するために欠かせない業務です。しかし、電卓やExcelを活用した手作業中心の管理の場合、勤務形態や就業規則が複雑になるほど計算や集計の負担が増え、ヒューマンエラーが発生するリスクも高まります。
そのため、勤怠計算を正確かつ効率的に行うためには、自社の運用に適したツールを選択することが重要です。特に、従業員数が多い企業や複雑な労働時間制度を採用している企業では、勤怠管理システムの活用がおすすめです。
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