column 2026年10月施行、事業主が押さえるべき重要改正:
ハラスメント対策の強化と社会保険の適用拡大

社労士コラム 第86回

公開日:2026.05.07、更新日:2026.05.07
2026年10月施行、事業主が押さえるべき重要改正:ハラスメント対策の強化と社会保険の適用拡大

先月のコラムでは新年度の改正や変更点について解説しましたが、2026年はこの後も重要な改正が多く予定されています。中でも2026年10月から施行となる、ハラスメント対策の強化、社会保険の適用拡大は企業運営に影響を与える重要な改正となります。施行まで半年を切っていますので、確認して備えていきましょう。

カスタマーハラスメント対策の義務化

カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」という)の対策については、東京都など地方自治体で条例による義務化などの対策がとられてきたものの、国としてはマニュアルの公表など“望ましい取り組み”という位置づけでした。増え続けるカスハラへの対応を強化すべく、2026年(令和8年)10月1日より、改正労働施策総合推進法に基づき、雇用管理上の措置義務へと格上げされ、顧客や取引先からの著しい迷惑行為から従業員を守ることが、会社の法的な責任となります。

カスハラとは

①顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、②社会通念上許容される範囲を超えた言動により、③労働者の就業環境を害すること。とされており、①~③の全てを満たす行為とされています。

会社が講ずべき措置

  •  事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

    • ①カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する
    • ②カスハラの内容及びあらかじめ定めた対処の内容を、労働者に周知する
  •  相談体制の整備

    • ③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
    • ④相談窓口担当者が、適切に対応できるようにする
  •  事後の迅速かつ適切な対応

    • ⑤事実関係を迅速かつ正確に確認する
    • ⑥被害者に対する配慮のための措置を適正に行う
    • ⑦再発防止に向けた措置を講ずる
  •  対応の実効性を確保するために必要なカスハラの抑止のための措置

    • ⑧特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備する
  •  そのほか併せて講ずべき措置

    • ⑨相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知する
    • ⑩相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する
  • 厚生労働省HP:リーフレット(詳細版)「2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」より引用

カスハラ対策は他のハラスメントと異なり、外部からの発生によるため、いつ発生するか、どういった事案になるかが予見できません。そのため、過去の事案などから想定されるケースを参考に、事前の準備や防止策、カスハラが発生した際の事後対応策を決定しておくことが重要となります。

また、以前のコラムでも触れましたが、業種や業態によっても必要となる対応が様々です。従業員への周知・啓発の際には、例えば「クレームの電話が30分以上続いた時は打ち切って構わない」など、個人の判断が必要ない具体的な基準を示すことが大切です。

さらに、緊急性のある場合や特に悪質な事案について、責任者によって的確な対応ができるよう、エスカレーションのフローを整えておくことも重要です。

施行までに、講ずべき措置を1つずつ確認しながら、カスハラ方針などの周知文やポスターの作成、就業規則の改正、相談窓口の設置、マニュアルの作成など準備を進めていきましょう。

求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の強化

カスハラ対策と同時に、2026年10月1日より、求職者やインターンシップ生に対するセクシュアルハラスメント防止対策も事業主の義務となります。これまでは従業員が対象でしたが、採用選考過程にある学生等に対しても、現行の男女雇用機会均等法と同等の防止措置を講じる必要があります。

会社が講ずべき措置は、従業員を対象とするセクシュアルハラスメントと同様ですが、求職者等に対する措置として必要となる準備があります。

  • ①求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、従業員及び求職者等に周知・啓発する
  • ②相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知する

従業員と異なり、求職者は接する機会も、従業員も限定的です。セクシュアルハラスメントが発生しないよう、例えば面談時間や場所の指定、連絡手段の限定など一定のルールを設ける、応募があった際に相談窓口をお伝えするなど、求職者独自の対応が必要となります。こちらも、いつどのような形で周知・啓発し、お伝えするのかなど具体的な検討が必要となります。

社会保険(厚生年金・健康保険)の適用拡大

短時間労働者(パート・アルバイトなど)への社会保険適用については、段階的に拡大していく事が決まっています。2026年10月からは賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃される予定です。

現在の基準では、所定労働時間が週20時間以上であっても、月の給与額が8.8万円に満たない場合、社会保険の適用はありません。

そのため、改正までに所定労働時間が週20時間以上の従業員について、加入要件を満たすかどうかの確認が必要となります。

社会保険に加入することになれば、健康保険から給付が受けられるようになり、将来の年金額が増加するというメリットがありますが、社会保険料の負担分、手取り額が少なくなってしまうというデメリットもあります。対象となる従業員と丁寧にコミュニケーションをとって準備を進めていきましょう。

なお、現在は短時間労働者の加入要件の一つである企業規模要件は従業員51人以上となっています。この企業規模要件についても2027年10月から段階的に引き下げが予定されています。動向を注視していきましょう。


2026年10月の改正は、企業の現場対応だけでなく、企業経営にも直結する内容ばかりです。施行直前に慌てないよう、今から社内体制の点検を進めていきましょう。具体的な進め方や規定の整備についてご不安がある場合は、社会保険労務士など専門家に相談することをおすすめします。

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