売掛金とは何?
似ている勘定科目や仕訳例をわかりやすく解説

クロノス広報チーム

公開日:2026.04.23、更新日:2026.04.23

売掛金は日々の企業経営を支える基盤となる存在ですが、その管理の重要さに気付いていない人も意外と多いものです。
売掛金は将来入金が見込まれている金銭であるため、本来は確実に回収されることが前提ですが、取引先からの入金が遅れたり回収できない状況が続いたりしてしまうと、資金繰りの悪化につながり、企業の経営基盤を不安定にする要因となります。
そのため、会社の安定した運営には売掛金の適切な管理が欠かせません。

本記事では、売掛金とはそもそも何なのかという基礎的な部分から、管理していく上で注意すべきリスク対策など、ポイントを整理しながら解説していきます。

売掛金とは?

売掛金とは、商品やサービスを提供した際にまだ支払われていない代金を後払いで回収する権利(売掛債権)のことを指す勘定科目です。
企業間の取引では月末締め・翌月払いなど、一定期間をまとめて後払いする掛け取引が一般的であり、商品を先に渡し代金は後から受け取るという信用取引の形態をとります。

企業は商品・サービスを先に提供し代金は後から受け取るため、一時的に未入金の状態になりますが、この金額は仕訳上「売掛金」として貸借対照表の資産に計上されます。
代金が入金されると、この売掛金は減少し、現金や預金に置き換わります。

売掛金は将来受け取ることが見込まれる資産である一方で、回収遅延や不良債権化のリスクもあるため、入金管理や取引先の信用状況の把握が重要となります。
売掛金は資金が増えているようでも現金を得ているわけではなく、入金されるまでのタイムラグも発生してしまうため、過度に売掛金が増えすぎてしまうと管理が追い付かず、回収漏れが発生してしまうリスクもあります。
適切な売掛金管理は企業の資金繰りを安定させ、健全な経営を維持するうえで欠かせない役割を担っています。

売掛金と混同しがちな勘定科目

取引の中には、売掛金と混同しがちな科目が複数存在するため、用途や性質を正しく理解しておくことが大切です。混同したまま記帳してしまうと、損益区分の誤りや、二重計上の発生など、会計上のミスに繋がるリスクがあります。
ここからは、売掛金と混同しがちな勘定科目について、わかりやすく解説していきます。

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買掛金

まず混同しやすい勘定科目として、買掛金があります。
買掛金は、企業が商品・サービスを仕入れた際に、まだ代金を支払っていない場合に発生する後で払う負債のことを指します。

仕入先から商品を受け取った段階ではまだ代金は支払われていませんが、将来支払うことが確定しているため、貸借対照表では、支払うまでの期間、買掛金として負債に記録されます。
売掛金は回収する権利であるのに対し、買掛金は支払う義務という特徴の違いがあります。

未収入金

未収入金とは、営業外取引で発生した未回収の債権を処理するための勘定科目です。
将来受け取ることが見込まれている資産である点は売掛金と同様ですが、売掛金は営業取引で発生する未回収の代金であることに対して、未収入金は営業外取引で発生するという点に大きな違いがあります。

営業外取引で発生するものとして、建物や土地などの固定資産の売却など、固定資産を売却したものの代金の支払いが後日になる場合や、有価証券の売却代金を未収にしている場合などが該当します。
従って会社の本業による収益ではなく、本業以外の臨時的な取引であるため、売掛金ではなく資産の勘定科目である未収入金を使って計上を行います。

前受金

前受金は、商品やサービスを提供する前に、取引先などから先に受け取った代金を記録する勘定科目です。
たとえば、2か月後に実施するセミナーの受講料を先に受け取った場合、まだサービスを提供する前にあたるため、前受金として処理します。

前受金は、代金を受け取っている状態ですが、まだ商品・サービスを提供する前であり、義務や責任が発生するため、貸借対照表では負債に分類され、商品・サービスを提供した際に収益に振り替えられます。

立替金

立替金は、本来は従業員や取引先などが支払うべき金銭を、会社などの他者が一時的に立て替えて支払った場合に発生する勘定科目です。
たとえば、社員が出張に行く際の交通費を会社が先に支払った場合、取引先が負担すべき費用の一部を会社が立て替えた場合などが該当します。

本来自社が負担すべき費用ではないということ、後日相手から金銭を返還してもらうことを前提としているため、貸借対照表では資産に分類されます。
商品・サービスを提供したものの未収となっている売掛金に対して、立替金は本来相手方が負担すべき費用を、一時的に立て替えて支払った金銭であるという点に違いがあります。

仮払金

仮払金とは、正式な用途や金額が確定する前に、一時的に立て替えて支払った場合に使用する勘定科目です。主に、社員に対する出張旅費の前渡しや、請求書がまだ届いていない段階で先に支払い済みではあるものの、支出の用途が未確定の場合に使用されます。

仮払金は仮の支出であるため、支払い内容が確定した際には、旅費交通費や消耗品費などその場合における適切な科目に振り替えて精算します。
未収の資産である売掛金に対して、仮払金は将来的には費用に振り替える、仮に払った金銭であるため、目的も性質も異なる勘定科目となります。

売掛金と売上の関係性

企業が商品やサービスを販売した際に、まだ代金を受け取っていない場合でも、会計上は売上を計上します。その際、まだ未収となっている代金は売掛金として処理を行います。

また、同じように未収の資産を指す勘定科目として、企業が商品やサービスを販売した際に、一定期日に必ず代金を支払うことを約束する証書として法的効力のある受取手形があります。
売掛金も受取手形は、どちらも将来的に代金を受け取る権利を指し、売上によって生じた債権であることから、売上債権と呼ばれます。
売上債権は商品やサービスの提供に伴って発生する資産であり、実際に代金が支払われることで帳簿上から消滅します。

売掛金の計上はいつ?

売掛金の計上は、売上の計上のタイミングに行われます。
また売上の計上は、2021年4月から適用された「収益認識に関する会計基準等」により、工事契約・受注作成のソフトウェアなど長期間にわたって収益が認識できる取引を除き、商品やサービスが顧客に引き渡された時点で発生します。

従来の会計では、企業が商品を出荷した時点で売上を計上する“出荷基準”が一般的でしたが、「収益認識に関する会計基準等」の適用により、顧客が商品を受け取り、内容を確認した時点で売上を計上する“検収基準”が求められるようになりました。

よって、適切なタイミングで売上を計上するためには、相手方の検収がいつ完了するのかを正確に把握しておく必要があります。トラブルを防ぐためにも、契約書で検収条件などを事前に確認しておくことが重要といえるでしょう。

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売掛金が発生した際の会計処理の流れ

企業が商品やサービスを販売し、後日代金を回収するまでの一連の会計処理は、企業経営に直結するため、実務において非常に重要な根幹といえます。
売上計上から、その後必要となる会計処理の流れについて、基本的なポイントを押さえながら、わかりやすく解説します。

①計上

まず、売上が発生した際には、その時点で計上する必要があります。
売上を計上する段階で、現金・クレジットカードでの支払い、または手形の受け取りがない場合には、掛取引として売掛金を計上する必要があります。

たとえば、企業が100,000円の商品を販売し、代金は翌月末に入金される取引を行ったと仮定します。この場合、売上計上時点では現金などの受け取りがないため、次のように売掛金で処理を行います。

<仕訳例>
借方 貸方
売掛金 100,000円 売上 100,000円

このように、代金の回収が後日となる場合の取引では、売掛金として資産計上する処理を行います。
売掛金の計上が適切に行われることで正確な財務諸表の作成が可能となり、企業の経営状況を正しく把握することができます。

②消込

取引先から入金があった際、その金額と売掛金を照らし合わせます。
入金額と売掛金が一致した場合、次に必要になるのが消込の処理です。

消込とは、売掛金として計上した未収の代金について、支払われた入金額を照らし合わせ、帳簿上の残高をゼロにする作業のことを指します。
この消込の作業をしなければ、本来回収済みの売掛金が帳簿上に残り続けてしまい、どの請求が未入金なのか分からなくなるという問題が発生してしまいます。

たとえば、1,500,000円で顧客に請求していた売掛金が、満額で銀行口座に振り込まれた場合の仕訳は、借方に普通預金1,500,000円、貸方に売掛金1,500,000円となります。

<仕訳例>
借方 貸方
普通預金 1,500,000円 売掛金 1,500,000円

上記のように売掛金が入金された際は、売上の記録と照合して帳簿上のデータを相殺する消込の作業が必要となります。
これにより、帳簿上の売掛金残高の整合性が保たれ、未回収金の早期発見や管理の適正化に繋げることができます。

③残高確認

決算時などに、取引先と自社の間で記録している売掛金の残高が正しいかどうかを相互に確認するため、取引先へ残高確認書を送付して照合する場合があります。
こういった帳簿に記載されている売掛金の金額と、実際の取引状況や顧客側の記録と一致しているか確認する作業のことを残高確認と呼びます。

会計処理において売掛金の残高に誤りがあると回収漏れや二重計上につながるため、残高確認を行うことで、計上漏れなどの早期発見に繋がり、回収漏れや不正な売上計上の防止・抑制につながります。

売掛金に関する仕訳処理の例【ケース別】

売掛金の会計処理は、入金方法や回収内容などによって様々なパターンがあり、状況に応じた正しい仕訳を行うことが重要です。
ここからは、実務でよく発生する売掛金に関する会計処理のさまざまな例を、ケース別に紹介していきます。

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売掛金を回収した際の仕訳

売掛金を回収した場合、会社の資産である現金や預金を増加し、未回収であった売掛金を減少するという作業が必要になります。
たとえば、12,000円の売掛金を現金で全額回収した場合、仕訳は次のとおりになります。

借方 貸方
現金 12,000円 売掛金 12,000円

しかし、中には取引先が振込手数料を差し引いて入金するような場合もあります。
その場合、振込手数料を費用として計上し、仕訳を行います。
たとえば、 100,000円の売掛金に対して、1,000円の振込手数料を差し引かれて入金された場合、仕訳では次のとおりになります。

借方 貸方
普通預金 99,000円 売掛金 100,000
支払手数料 1,000円

上記のように、売掛金を回収した際に消込の処理を行うことで、売掛金は帳簿から減少します。

売掛金を回収不可能になった場合の仕訳

取引先が倒産した場合など、売掛金の回収が不可能であると判断された場合、貸倒損失という勘定科目で処理を行います。

たとえば、取引先が倒産し、売掛金100,000円が回収不能と判断された場合の仕訳は次のとおりになります。

借方 貸方
貸倒損失 100,000円 売掛金 100,000円

上記のように売掛金が回収不能となった場合は、売掛金を帳簿から減少させ、損失として処理するための仕訳が必要となります。

また、こういった将来発生する可能性のある貸倒れに備えて、あらかじめ費用として計上しておく、貸倒引当金という勘定科目があります。
貸倒引当金を設定していた場合、売掛金が実際に回収できなくなった場合、まず貸倒引当金から使い、不足分を貸倒損失で処理するようになります。
たとえば、売掛金100,000円が貸倒れ、貸倒引当金の残高が80,000円ある場合、次のような仕訳になります。

借方 貸方
貸倒引当金 80,000円 売掛金 100,000円
貸倒損失 20,000円

貸倒引当金を設定していた場合は、まず貸倒引当金を切り崩し、不足分だけを貸倒損失で計上する処理が必要になります。

売掛金の一部が入金された際の仕訳

売掛金の一部が入金された場合は、入金された分のみ売掛金を減少させ、残額は帳簿に残し、未収の代金として引き続き管理するという流れになります。
たとえば、売掛金100,000円のうち、50,000円のみ入金があった場合、仕訳は次のとおりになります。

借方 貸方
普通預金 50,000円 売掛金 50,000円

上記の処理の結果、売掛金は入金された50,000円分減額されており、残りの50,000円については、未回収の売掛金として帳簿に残ります。
一部入金があった場合は、なぜ残りの50,000円が未入金なのかという理由も明確にしておくことが、リスクの回避につながります。どれだけの未収が残っていて、どの請求分が回収済みなのか正確に把握するためにも、一部のみ入金された場合に帳簿上の残高を減らす部分消込の処理を怠らないよう注意することが重要です。

商品が返品された際の仕訳

一方で、販売した商品が返品される場合もあります。
この場合のことを、売上戻りと呼び、販売時の仕訳を取り消す逆仕訳の処理が必要です。

たとえば、150,000円の商品を掛けで販売したものの返品された場合、仕訳は次のとおりになります。

借方 貸方
売上 150,000円 売掛金 150,000円

このように、販売時に行った仕訳と、借方・貸方の勘定科目を逆にして仕訳を行うことを逆仕訳とよび、取引仕訳の取り消しを行うことが可能です。
返品されたからといって、以前の仕訳自体を削除してしまうと、取引の流れが把握しづらくなってしまいます。
そのため、返品があった場合など取引を修正したい際には、逆仕訳を使い、過去の取引を確認できる状態で記録することが重要となります。

商品を値引きした際の仕訳

売掛金で販売した商品を値引きした場合などは、すでに計上している売上高を減額する処理が必要となり、売上のマイナス科目である売上値引という勘定科目を使用します。
たとえば、売掛金で販売した後に10,000円の値引きを行った場合、次のような仕訳が必要になります。

借方 貸方
売上値引 10,000円 売掛金 10,000円

また、売掛金200,000円について、20,000円を値引きし、残りの180,000円が入金された場合の仕訳は、次のとおりです。

借方 貸方
普通預金 180,000 売掛金 200,000
売上値引 20,000

このように、値引きは返品とは異なり商品自体は返却されないため、在庫の戻し処理などは発生しません。実務では、どの売掛金に対する値引きなのかを明確にし、売掛金台帳と消込額を正確に一致させることが重要です。

売掛金と買掛金を相殺する場合の仕訳

取引先に対して売掛金と買掛金の両方がある場合、双方の債権と債務を差し引いて計算することが可能です。こういった、対等額を差し引いて支払いと受け取りをまとめる処理を「相殺(そうさい)」と呼びます。

たとえば、自社の売掛金100,000円と、相手先に対する買掛金80,000円を相殺し、差額20,000円は相手先から受け取ることになった場合、仕訳は次のとおりになります。

借方 貸方
買掛金 80,000円 売掛金 100,000円
普通預金 20,000円

相殺を行う場合は、必ず相手方の合意を得た上で行い、相殺金額は双方の帳簿と一致させることが重要です。また、消込漏れや誤相殺が発生しないよう注意しましょう。

消費税の仕訳

売掛金取引における消費税の処理について、税抜き処理を行った場合の仕訳例を紹介していきます。まず税抜き処理とは、商品やサービスの本体価格と消費税額を区分して記録する方法です。
売上や仕入れに伴う消費税についても、それぞれ適切な勘定科目で計上する必要があるため、国税庁の定める取り扱いに基づいて、売上に伴う消費税については仮受消費税を、仕入や費用に伴う消費税については仮払消費税を使用して処理します。

売った商品の税率が10%のみの場合

前述したとおり、税抜き処理では商品本体価格と消費税額を分けて記帳します。
100,000円の商品を販売し、税率が10%であった場合、売掛金として計上するのは合計請求額である110,000円になります。

借方 貸方
売掛金 110,000 売上 100,000
仮受消費税 10,000

上記が仕訳例となり、ポイントは売掛金を税込で計上するということと、受け取る消費税は仮受消費税として計上するという点です。

売った商品の税率が10%と8%、どちらも含まれている場合

売った商品の税率に10%と税率8%どちらも混在している場合、売上と仮受消費税のどちらも、税率ごとに区分して記録することが必須です。
売掛金については、税率で区別せず請求した合計額を記入し、計上を行います。

たとえば、税率10%のA商品100,000円と、税率8%のB商品50,000円を販売した場合を例に考えていきます。この場合、消費税額はA商品が10,000円、B商品が4,000円となり、これらを合算した164,000円を売掛金として計上します。仕訳は次のとおりです。

借方 貸方
売掛金 164,000円 売上(10%) 100,000円
仮受消費税(10%) 10,000円
売上(8%) 50,000円
仮受消費税(8%) 4,000円

また、入金時の仕訳は以下のようになり、売掛金を単純に消込する処理だけでよいため、税率の区分は不要となります。

借方 貸方
普通預金 164,000円 売掛金 164,000円

クレジットカード払いによる売上の場合

商品やサービスをクレジットカード払いで販売した場合、クレジット売掛金という勘定科目を使用します。クレジットカード払いの場合、通常の売掛金とは異なり、債権の相手が顧客ではなく信販会社になるためです。

たとえば、商品1,500円を全額クレジットカード払いで販売し、代金を翌月末に受け取るとした場合について考えていきます。また、信販会社への手数料は販売代金の2%とします。この場合、以下のような仕訳が必要となります。

借方 貸方
クレジット売掛金 1,470円 売上 1,500円
支払手数料 30円

また、代金を回収した場合の仕訳は以下のようになります。
クレジットカード払いの場合、顧客はカード会社に代金を支払うため、販売した側は顧客からではなく、カード会社からの入金を受け取る流れとなります。

借方 貸方
普通預金 1,470円 クレジット売掛金 1,470円

消費税が10%含まれている商品の返品処理を行う場合

消費税10%の商品の返品処理を行う場合、売上と仮受消費税をそれぞれ減額し、売掛金の債権を取り消す処理が必要になります。

たとえば、販売した商品(税込み価格11,000円、消費税10%)が返品された場合には、借方に売上(税抜単価)10,000円と仮受消費税の1,000円を計上し、貸方には売掛金11,000円を計上して、当初の売上を取り消します。

借方 貸方
売上(10%) 10,000 売掛金 11,000
仮受消費税 1,000

消費税が10%と8%、どちらも含まれている商品の返品処理を行う場合

複数の税率が混在する商品の返品処理を行う場合税率ごとに売上と仮受消費税を算出し、それぞれの金額を取り消す処理が必要となります。

たとえば、商品A(税抜き金額10,000円、消費税10%)と商品B(税抜き金額5,000円、消費税8%)の商品を掛けで販売し、のちに全額返品された場合について考えていきます。
売掛金として販売した合計額は、11,000円+5,400円で、16,400円となります。
返品時には、以下のような売上と仮受消費税を税率別にし、売掛金を取り消す仕訳を行います。

借方 貸方
売上(10%) 10,000円 売掛金 16,400円
仮受消費税(10%) 1,000円
売上(8%) 5,000円
仮受消費税(8%) 400円

売掛金が回収不能となった場合の会計処理

売掛金は、将来的に金銭を回収する資産として計上されます。
しかし、取引先の倒産や支払い遅延など、状況によっては売掛金の回収が困難になるケースも考えられます。
こうした回収不能となった場合のリスクに備え、実務において必要となる会計処理についてポイントをおさえながら解説していきます。

売掛金が切り捨てられた場合の会計処理

国税庁が公開している「No.5320 貸倒損失として処理できる場合」によると、法的に債権が切り捨てられた場合、その金額はその事実が生じた事業年度の損失(貸倒損失)として計上できるとしています。

貸倒損失として対象となるのは、主に以下のような3つの事実に基づいて債権が切り捨てられた場合です。

  • 会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられた金額
  • 法令の規定による整理手続によらない債権者集会の協議決定および行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で、合理的な基準によって切り捨てられた金額
  • 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明らかにした債務免除額

売掛金の全額が回収不能となった場合の会計処理

前述した国税庁の示す基準「No.5320 貸倒損失として処理できる場合」に基づき、債権者の資産状況や支払能力などから全額回収が不可能となった場合、その事業年度の貸倒損失として計上します。

たとえば、売掛金全額1,000,000円が全額回収不能となった場合の仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
貸倒損失 1,000,000円 売掛金 1,000,000円

一定期間取引停止後、弁済がない場合の会計処理

国税庁の規定によると、継続的な取引をしていた相手方と取引を停止し、その後1年以上経過しても弁済がない場合、売掛金から備忘価格の1円を差し引いた金額を貸倒損失として計上できます。
また、この場合貸付金などは含まないため注意が必要です。

具体的には以下のような事実の発生が該当します。

  • 取引の停止から1年以上経過したとき
    不動産取引のような一度きりの取引で発生した売掛金は、“取引停止後1年経過”という貸倒れのルールの対象にはならないため、単発の取引には適用されません。
  • 回収費用が債権額を上回る場合
    同じ地域にいる複数の相手への売掛金の合計額が、取り立てのための費用を下回り、催促しても弁済がない場合

形式上の貸倒れが発生した際は、売掛金の帳簿総額から備忘価格の1円を残し、それ以外を貸倒損失として処理することが一般的であり、国税庁の法人税基本通達「第1款 金銭債権の貸倒れ」にも示されている方法です。

たとえば、売掛金300,000円をこのルールで処理する場合、仕訳は以下のとおりです。

借方 貸方
貸倒損失 299,999円 売掛金 299,999円

この処理により、売掛金勘定には1円のみが残り、帳簿上で債権の存在を形式的に管理し続けることが可能となります。

売掛金が回収不能となった場合の対処法

売掛金の未回収は、資金繰りの悪化や経営リスクの増大に直結する課題であるため、適切な対応を行わなければなりません。
ここからは、売掛金が回収不能となった場合に必要となる対処法について見ていきましょう。

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①取引先への催促・交渉を行う

売掛金が期日までに入金されない場合、まず行うべきことは取引先に支払状況を確認し、入金を促すことです。
実際には、単なる入金忘れや担当者の処理ミス、伝票や請求書の不達といった原因も多いため、初期段階の催促で解決できることも少なくありません。

まずは電話やメールなど、事務的な確認から始めます。それでも入金がない場合は、書面を通じて遅延理由や新たな支払期限を確認しましょう。
相手の資金繰りが厳しいことが判明した場合には、支払い期限の延長や分割払いの提案など、現実的な回収方法を交渉することが大切です。

②内容証明郵便で催促書を送る

催促を行っても反応がない、支払い期限を何度も守らない、といった場合、内容証明郵便で催促書を送るという手段があります。内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の」文書を送ったかを公的に証明できるサービスです。

内容証明郵便の利用は、取引停止後の貸倒処理や税務署から説明を求められたときなどの場面で、回収の催促をおこなったという客観的な証拠になるものです。
国税庁も、貸倒損失を認める際「催促した事実」や「支払いを求めた記録」があることが重要としているため、内容証明は回収に向けた取り組みを示す手段として重要になります。

③法的手続きの検討

催促に交渉、内容証明などの催促を重ね、回収の努力を行っても入金がされない場合、法的手続きを検討します。

法的手続きは状況や債権額に応じて、主に以下の方法が選択されます。

  • 支払催促:裁判所を通じて相手方に支払いを催促する手続き。
  • 民事調停:裁判所の調停委員を仲介者として、話し合いによる解決を図る手続き。
  • 通常訴訟:裁判を通じて支払い義務を確定させ、強制執行などを目指す手続き。

こうした法的対応においては、費用対効果の検討が不可欠です。
相手に資産状況や手続きにかかるコストを精査し、最終的に回収不可と判断した場合には、財務上の貸倒損失としての処理を検討することも必要です。

売掛金の取り扱いに関する注意点

売掛金は企業の資金繰りにも直結する重要な資産です。管理が不十分な場合、帳簿に利益が計上されていても現金が不足する黒字倒産を招く恐れもあります。
売掛金の取り扱いに関してどのような管理が必要なのか、注意すべきポイントについて解説していきます。

売掛金の取り扱いの時効期間は5年

売掛金の時効期間は民法改正により、2020年4月1日以降に発生した債権について、原則5年となりました。改正前の時効期間は2年でしたが、短期消滅時効が廃止され統一されたことで、より管理しやすい制度となりました。

この時効は、放置すると自動的に消滅するものではなく、債務者が時効を主張した際にはじめて権利が消えるという仕組みとなっており、内容証明郵便による催告を行うことで時効を6か月伸ばすことができます。
また、そのほかにも訴訟や支払催促などを行うことで時効を伸ばしたり更新したりすることも可能です。
しかしながら、売掛金は発生から5年放置してしまうと回収できなくなるリスクが極めて高くなるため、日ごろからの定期的な催促・管理が欠かせません。

締め後売上の計上漏れに注意

特に決算期は、締め日以降に発生した売上に注意が必要です。
月次処理の場合は、締め日以降の売上が翌月に計上された場合でも年間を通した売上に影響はありません。
しかし会計年度をまたぐ場合、締め日以降に発生した売上であっても、決算日(期末)までに発生した売上については、当期の分として計上しなければならない点に注意しましょう。
ここで計上漏れがあると、結果として売上を少なく申告することになり、税務調査で指摘を受けるリスクが高まります。

また、普段から会計ソフトで請求書の金額をそのまま売上として処理している場合、決算で追加した分が翌日の請求分と重なり、二重に計上されてしまうことがあります。
こうしたミスを防ぐためにも、新しい年度が始まったタイミングで、正しく振替処理を行うようにしましょう。締め後売上の管理が不十分だと、売上だけでなく売掛金の残高管理にも影響が出てしまうため、決算期は特に慎重に確認することが必要です。

売掛金は決算書のどこに記載する?

売掛金は、貸借対照表の資産の部に記載されます。
商品やサービスの提供後、まだ現金として受け取っていない未収代金を表す売掛金は、通常1年以内に回収が見込まれることから、資産の中でも流動資産に区分されます。
一方、売上は損益計算書の収益として計上され、掛け取引によって売上が増えれば未回収分として売掛金も増えます。

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売掛金を管理する際のポイント

売掛金は、企業の資金繰りや経営基盤の安定性を支える重要な資産であるため、売掛金の管理ミスは未回収リスクや資金繰りの悪化を招き、最悪の場合、企業経営に影響を与えてしまいます。
こうした未回収の発生を未然に防ぐために、実務において徹底すべき管理のポイントを確認していきましょう。

①売上債権回転率・回転期間

売掛金は、売上が現金化するまでにタイムラグがあるため、回収スピードを定期的に測定することが重要です。売上債権回転率、回転期間を確認することで、売掛金がどれだけ早く現金に変わっているのかを客観的に把握しましょう。

まず、売上債権回転率は売掛金の回収効率を知ることができる指標となり、求め方は以下のとおりです。

売上債権回転率の求め方

売上債権回転率=売上高÷売上債権(売掛金+受取手形)の平均残高

数値が大きいほど、回転率がよく、回収がはやいという見方になります。

また、売上債権回転期間とは、売掛金が平均して何日で回収できているのかを示す指標であり、求め方は以下のとおりです。

売上債権回転期間(回収期間)の求め方

売掛債権回転期間=365÷売上債権回転率

回転期間が短いほど回収がはやく、資金繰りが安定しているという見方ができます。

これらの指標を定期的に確認することで、資金繰りの悪化や回収遅延、貸倒れのリスクが高いことに気付くことができます。

②与信管理

与信管理とは、相手の会社に対して取引の可否や、いくらまでの掛け売りを認めるかなど、どれだけ信用を与えて取引できるかを事前または継続的に判断し、未回収リスクを防ぐ管理のことです。
与信管理を徹底することで、未回収や貸倒れを防ぐことに繋がり、資金繰りの悪化を防止することもできます。さらに、取引先とリスクを抑えた取引ができるため、安全に取引を継続することも可能となります。

具体的な実施内容として、まず取引先の財務状況や支払実績など信用を調べます
そのうえで、いくらまでの取引を可能とするかなどの与信限度額(取引条件)を決定し、日々の取引において遅延がないか、売掛金が増えすぎていないか支払い状況を確認することが重要です。
この調査のうえで危険な兆候があれば、限度額の引き下げや前金を求めたりなどの対応を早期の段階で行うことが可能となります。

③残高確認

帳簿上の売掛金残高が正しく記載されていても、取引先側の記録と一致していなければ、入金遅延や請求漏れの原因にもなります。
定期的な残高確認を行うことで、請求漏れや入金の消込忘れ、あるいは金額の誤入力などによる記録のずれを早期に発見でき、誤りを早い段階で修正することができます。

また、残高確認は第三者である取引先を通して確認することで、不正防止にもつながり、資金回収リスクを正確に把握するうえでも有効な手段です。
記録ミスの早期発見や不正防止、リスクの早期察知のためにも、自社の帳簿に記録されている売掛金残高と、取引先が認識している未払残高が一致しているかどうか、書面などで相互に確認することが大切です。

④売掛金年齢表

売掛金年齢表とは、売掛金がどれくらいの期間にわたって回収されずに残っているかを期間ごとに集計して管理した表のことを指します。
一般的には、「0日~30日」「31日~60日」「61日~90日」「91日以上」といった区分で整理され、売掛金を滞留期間別にひと目で把握できるのが特徴です。

この表を作成することで、回収が遅滞している取引先を早期に特定できるだけでなく、滞留期間に応じた貸倒れのリスクを客観的に評価できるため、貸倒引当金を計上する際の判断材料としても活用できます。
実務で積極的に活用している企業は少なく、どちらかといえば専門知識を要する管理手法として位置づけられています。  

⑤領収書

売掛金を銀行振込ではなく現金で直接受け取った場合など、客観的な記録が残らない形で金銭の受け渡しが行われた際には、領収書を作成して適切に保存することが重要です。

領収書は金銭授受の事実を証明する客観的証拠となるだけでなく、会計処理や内部監査、さらには税務調査における裏付け資料となるからです。また、発行することで取引先との入金に関する認識相違を未然に防ぐことができます。

領収書には、金額や日付、内容、受取人などの基本情報を記載する必要があります。

領収書に記載する内容の一例

  • 領収書の発行日
  • 受取金額
  • 金額の内訳
  • 取り引きの内容(売掛金の回収など)
  • 受取人名および相手方の名称 など

上記に加え、金額に応じて収入印紙の貼付も必要になります。収入印紙の税額については、以下の表をご参照ください。

売上代金に係る金銭または有価証券の受取書
記載された受取金額 収入印紙税額
5万円未満 非課税
5万円以上100万円以下 200円
100万円以上200万円以下 400円
200万円以上300万円以下 600円
300万円以上500万円以下 1,000円
500万円以上1,000万円以下 2,000円
1,000万円以上2,000万円以下 4,000円
2,000万円以上3,000万円以下 6,000円
3,000万円以上5,000万円以下 10,000円
5,000万円以上1億円以下 20,000円
1億円以上2億円以下 40,000円
2億円以上3億円以下 60,000円
3億円以上5億円以下 100,000円
5億円以上10億円以下 150,000円
10億円以上 200,000円
金額の記載なし 200円

【引用】印紙税額の一覧表|国税庁

⑥売掛保証サービス

売掛保証サービスとは、取引先の倒産や経営悪化などによって代金が支払われなくなった場合に、保証会社が未回収の売掛金を代わりに支払うサービスです。

このサービスによって、掛取引における最大のリスクである貸倒れを回避し、損失を軽減することができます。
しかし、このような売掛金の未回収リスクを軽減できるメリットがある反面で、保証料などのコスト負担や審査基準、保証範囲などの制約もあります。
そのため、利用する際には取引先の状況や自社の管理体制、費用対効果をふまえ、必要性を慎重に検討することが大切です。

⑦売掛金担保ローン

売掛金担保ローンとは、企業が保有する売掛金を担保として、金融機関から融資を受ける仕組みのことを指します。「ABL(Asset Based Lending)」とも呼ばれ、売掛債権という事業資産を評価して資金調達ができる方法として注目されています。

この制度を利用することで不動産などの担保を持っていない企業でも融資を受けることができ、売掛金の入金期日を待たずに必要な資金を調達することができます。

ただし、あくまでも融資になるため返済義務が生じるほか、金利や手数料などのコストが発生します。また、取引先の信用状況や売掛金の内容によっては希望する融資額が設定されないこともあるため、自社にとって適切な手段であるか、事前の検討が重要です。

⑧保証制度

売掛金の回収に不安がある企業の場合、売掛債権担保融資保証制度や取引信用保険制度の活用もおすすめです。

売掛債権担保融資保証制度は、融資調達を円滑に進めたい場合に適しており、企業が保有する売掛金を担保として金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会がその融資を保証する制度です。この制度を利用して資金調達が可能となれば、売掛金を回収するまでの資金繰りに対する不安を解消でき、黒字倒産などのリスク回避にも有効です。

なお、取引信用保険制度とは、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなってしまった際に、その損失の一部を保険金として保証してもらえる制度です。この保険に加入しておくと、取引先が突然支払い不能に陥った際にも、一定額が保険から支払われるため、資金繰りの悪化を防ぐことができます。

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まとめ

売掛金は売上と直結する、企業にとって非常に重要な資産です。回収の遅れや未回収が発生してしまうと、企業経営に直結してしまうため注意して管理する必要があります。

もし売掛金の管理不足から資金が足りなくなってしまうと、仕入れ代金の支払いや人件費など、日常の支払いが滞ってしまうため、売上債権回転率を確認することや、売掛金年齢表の作成、残高確認、保証制度や保険の活用など、適切な管理体制を整えることで未回収リスクを抑え、安定した資金繰りにつながります。

日々の経費処理は正確な資金管理には欠かせないため、経費精算システムを導入し、売掛金管理とあわせて体制を整えることで、企業全体の資金管理をより安定させることができます。
クロノスの経費精算システムは、予算管理機能が搭載されているため、あらかじめ設定した予算と実績を一覧から確認することができます。もし予算を超えてしまった場合でも、該当箇所は赤字で表示され、プロジェクトや部署ごとの状況をひと目で把握できます。
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