変形労働時間制とは?1カ月・1年単位の計算方法や
就業規則の記載方法をわかりやすく解説

クロノス広報チーム

公開日:2026.03.19、更新日:2026.03.19

変形労働時間制は、業務の繁閑に合わせて労働時間を効率的に配分し、時間外労働の削減や柔軟な働き方を実現できる制度です。しかし、導入には正確な上限の把握や労使協定の締結、就業規則への明記など、厳格な法的手続きが欠かせません。

本記事では、1カ月・1年単位の計算方法やフレックスタイム制等との違い、メリット・デメリットから時間外労働による割増賃金の考え方まで詳しく解説していきます。

変形労働時間制についてわかりやすく解説

変形労働時間制とは、業務の繁閑に合わせて労働時間を効率的に配分する制度です。繁忙期に長く働き、閑散期に短く働くことで期間平均して法定労働時間内に収める仕組みであり、柔軟な働き方を実現できる制度のひとつです。
法定労働時間を遵守しながらメリハリのある働き方を実現し、生産性向上への寄与が期待できます。

法定労働時間とは

法定労働時間とは、労働基準法32条で定められた労働時間の上限を指し、原則として1日8時間、1週40時間とされています。これを超えて労働させる場合には、後述する36協定の締結と割増賃金の支払いが必要です。
多くの企業がこの原則に基づき勤務時間を設定していますが、業種によっては季節や月ごとに仕事量の波があるため、この一律のルールだけでは効率的な運用が難しい業種もあるのが実態です。

変形労働時間制とは

変形労働時間制とは、特定の期間(1カ月や1年など)を平均して、1週間あたりの労働時間が法定労働時間(原則40時間)を超えないように設定し、特定の日に1日8時間、特定の週に1週40時間を超えて働くことができる制度です。
あらかじめ労働時間を割り振り繁忙期に応じて働くことで、柔軟に働きながら年間の労働時間の短縮を図ることができます。

変形労働時間制の種類

変形労働時間制には、以下の4つの種類が存在します。それぞれ労働時間を調整する期間の長さによって分類され、労使協定の締結と就業規則にルールを定めることで導入できます。

  1. 1カ月単位の変形労働時間制
  2. 1年単位の変形労働時間制
  3. 1週間単位の非定型的変形労働時間制
  4. フレックスタイム制

似た言葉との違い

変形労働時間制は、柔軟な働き方を実現するための鍵になるということを前述で挙げていきました。
しかし、フレックスタイム制など労働時間を柔軟に扱う制度は複数存在するため、正しく区別できていないケースも少なくありません。それぞれの仕組みや目的の違いを正しく理解するため、以下で解説していきます。

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フレックスタイム制との違い

フレックスタイム制は、一定の期間について、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業時刻と終業時刻を自由に決定できる制度です。変形労働時間制の一種ではありますが、大きな違いは労働時間の決定権にあります。

具体的にどのようなことかというと、変形労働時間制は会社が事前に勤務シフトを確定させますが、フレックスタイム制では従業員自身が日々の労働時間を決めます。また、清算期間内での総労働時間で管理するため、個人の裁量が大きいことが特徴です。
フレックスタイム制に対し、変形労働時間制は企業が決定権を持つため勤務時間を自由に調整することはできません。

裁量労働制との違い

裁量労働制は、実際に働いた時間に関係なく決められた時間を働いたものとみなす制度で、仕事の成果や実績などで評価が決められます。そのため、実際に何時間働いたかを問わない仕組みです。
それに対し変形労働時間制は、あくまで実労働時間をベースに特定期間の労働時間を事前に設定して管理する制度であるため、時間の考え方そのものが根本から異なります。

裁量労働制は、専門職や企画業務など、仕事の進め方を大幅に本人へ委ねる必要がある職種に限定して適用されます。
導入することで、企業側は勤怠管理の事務負担を軽減できるメリットがある一方、その分従業員には自分自身で仕事のペースを調整する力が必要となります。自由度が高い働き方ができるため、自分でオン・オフの切り替えをしっかり行えるかどうかで、人によって適性が分かれる制度といえるでしょう。

36協定との違い

36協定は、従業員が法定労働時間を超えて時間外労働や、休日労働を命じる場合に締結する労使協定です。従業員に1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超える時間外労働や休日労働させる場合に締結が必要となる手続きですが、変形労働時間制は、法定労働時間の枠内で労働時間を配分する制度そのものです。

つまり、変形労働時間制を導入した際、従業員に変形期間内の法定労働時間の総枠を超えて労働させる場合は、別途36協定の締結と届出が必ず必要となります。

シフト制の違い

シフト制とは、就業規則などで定められた労働条件に基づき、従業員の勤務日や勤務時間を週や月単位の交代制で割り振る勤務形態のことを指します。一般的なシフト制の場合、原則として1日8時間・週40時間の範囲内で勤務表を作成しなければならず、この上限を超える場合には36協定の締結と割増賃金の支払いが必要です。

対して変形労働時間制は、一定期間を平均して週40時間以内に収めることを条件に、特定の日に8時間、特定の週に40時間を超える労働をあらかじめ設定できる労働時間の枠組みそのものを柔軟にする制度です。一方でシフト制は勤務時間を割り振る方法であるため考え方が異なります。
つまり、業務の繁閑に合わせて1日8時間を超えるシフトを組むためには、変形労働時間制という制度の導入が必要となるのです。

変形労働時間制を導入するメリット・デメリット

変形労働時間制は、繁閑に合わせて労働時間を効率的に配分し、時間外労働の削減や柔軟な働き方を実現できるというメリットもありますが、労働時間の管理は複雑化するため人事・労務担当者の実務上の負担も伴います。
運用の実態に即して、メリットとデメリットについて具体的に見ていきます。

メリット

変形労働時間制の導入メリットは、人件費を最適化することで無駄なコストを削減できる点が挙げられます。

通常の労働時間は、1日8時間を超えた場合の時間外労働時間に対して割増賃金を支払う必要があると定められていますが、変形労働時間制は繁忙期の長時間勤務をあらかじめ所定労働時間として設定できます。
その分、閑散期の労働時間を短く設定し、特定の期間全体で労働時間を平均化することで、法定労働時間の総労働時間内に収めることができます。

業務の繁閑に合わせて労働時間をあらかじめ適切に割り振ることで、本来発生していたはずの時間外労働を最小限に抑えることができます。加えて、無理のない人員計画と人件費の削減を行いながら閑散期の休日増加や勤務短縮を通じて従業員のワークライフバランス向上に繋げることも可能となります。

デメリット

一方、変形労働時間制のデメリットは労働時間の管理の複雑化が挙げられます。
残業代の計算では所定労働時間を超えると残業代が発生するという考え方は同じとなりますが、従来の1日8時間、1週40時間超という単純な基準ではなくなり、期間によって考え方が異なるため計算方法も煩雑です。残業代についての考え方は後述にて解説していきます。
計算方法が煩雑という点に加え、対象の従業員と期間を正確に把握し、事前にシフトを確定させて対象となる従業員へ周知しなければなりません。そして一度決定されたシフトは会社都合では変更できず、給与計算にも反映させなければならないため管理が複雑になりがちで、手作業での管理はミスが非常に起きやすくなります。

また、変形労働時間制を導入すると、特定の日だけ労働時間が長く(または短く)なります。
そのため、固定時間制で働く他部署の従業員からすると、「あの部署は早く帰れる日があってずるい」、あるいは逆に変形労働時間制の対象の従業員から「自分たちだけ遅くまで働かされている」といった不満が生じることも考えられます。こうした感情的な対立を防ぐためにも、制度の目的を正しく周知することが重要です。

従業員側から見ると会社の事業計画に沿って労働時間が指定されるため、個人の都合に合わせて始業・終業時刻を選べるフレックスタイム制と比較すると、柔軟性という点では一歩譲る形となります。

変形労働時間制における労働時間の上限時間

変形労働時間制であっても、労働基準法で定められた法定労働時間の総労働数を超えて労働させることはできません。ここでいう総労働数は、1週間あたりの労働時間が平均40時間以内(特例対象事業場は44時間)に収めなければならない、ということを指します。
そのため、上限時間をいかに正しく計算するかということも重要なポイントであり、制度を適用するための大前提です。

以下では、この上限時間を正しく計算するための式について解説していきます。

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上限時間の計算方法

法定労働時間の総労働時間数の上限は以下の式で計算します。

上限時間=40時間(1週間の平均労働時間)×対象期間の暦日数÷7日間

変形労働時間制における労働時間の上限は、変形期間内の暦日数によって決まります。この期間内の所定労働時間の合計が、法定労働時間の枠数に収まるよう割り振りが必要となります。

1年単位の変形労働時間制の場合

1年単位の場合、変形期間は1年です。計算する際の暦日数は、365日(うるう年は366日)で以下の式で計算します。

1年単位の法定労働時間の上限=40時間(1週間の平均労働時間)×対象年の日数÷7日

【暦日数が365日の場合】40時間×365日÷7日=2,085.7時間
【暦日数が366日の場合】40時間×366日÷7日=2,091.4時間

また、1日の上限は10時間、1週間の上限は52時間以内と定められ、連続勤務の日数も原則6日までと定められているため注意しましょう。

1カ月単位の変形労働時間制の場合

1カ月単位の変形期間は文字通り1カ月となります。月の暦日数は28日から31日で変動し、それに応じて上限時間が変わるため注意しましょう。
計算式は以下のとおりです。

1カ月単位の法定労働時間の上限=40時間(1週間の平均労働時間)×対象月の日数÷7日

【31日の月】40時間×31日÷7日=177.1時間
【30日の月】40時間×30日÷7日=171.4時間
【29日の月】40時間×29日÷7日=165.7時間
【28日の月】40時間×28日÷7日=160.0時間

この時間を超えて労働させることは認められていないため、月ごとの日数の違いを考慮しながら計算した上限時間を下回るよう調整が必要です。

1週単位の非定型的変形労働時間制の場合

規模30人未満の小売業や旅館などに限定された制度で、1週間の上限は40時間で以下の計算式で求めることができます。

1週間単位の法定労働時間の上限=40時間(1週間の平均労働時間)×精算期間の日数÷7日

フレックスタイム制の場合

フレックスタイム制も変形労働時間制の一種ではありますが、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業時刻と終業時刻を自由に決定できる制度です。
清算期間での1週間の労働時間を40時間とし、以下の計算式で求められます。

清算期間での法定労働時間の総枠=40時間(1週間の平均労働時間)×精算期間の日数÷7日

清算期間 清算期間の日数 総枠
1カ月 31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160.0時間
2か月 62日(31日+31日) 354.2時間
61日(31日+30日) 348.5時間
3か月 92日(31日+31日+30日) 525.7時間
91日(31日+30日+30日) 520.0時間

清算期間が1カ月を超える場合は、月ごとの平均労働時間にも週50時間以内に収める必要があるため注意が必要です。

変形労働時間制における残業代を計算する方法

変形労働時間制における時間外労働の考え方は、通常の労働時間とは大きく異なり1日8時間、週40時間を超えたからといってすべてが時間外労働になるわけではないため、何をもって時間外労働とするかの判断が少し複雑です。
次の章では、変形労働時間制を適用した場合の残業代の考え方と、計算方法について解説していきます。

割増率とは何か

従業員に支払われる残業代は基礎賃金に割増率を乗じて計算します。変形労働時間制を導入していてもこの割増賃金が発生するという考え方そのものは変わらず、時間外労働が発生した場合に割増賃金として加算されます。
また、午後10時から午前5時までに労働が発生した場合には深夜手当として25%以上の割増賃金の支払いが必要となり、1週間に少なくとも1回、4週間に4回以上与えなければいけない日と定められている日に労働が発生した場合、休日労働として35%以上の割増賃金の支払わなければならないと以下のように定められています。

  • ・時間外労働(法定外残業):25%以上 ※月60時間を超える場合は50%以上
  • ・深夜労働:25%以上
  • ・休日労働:35%以上

ただし、変形労働時間制における残業代の計算で重要なのは、変形期間のどのタイミングで、どの基準を超えた場合に残業と見なされるのかという判定基準です。変形労働時間制では、事前に定めた日・週・変形期間の各上限を超えたタイミングでそれぞれの割増賃金を計算する必要があるため、通常の労働時間制とは計算方法が異なり複雑です。では、計算の手順を以下で見ていきましょう。

時間外労働時間数を計算する際の手順

変形労働時間制の残業計算は以下の3つの手順で計算されます。

  1. 1日単位の時間外労働
    • ・所定労働時間が1日8時間を超える日:所定労働時間を超える時間をカウントする
    • ・所定労働時間が1日8時間以内の日:1日8時間を超える時間をカウントする
  2. 1週間単位の時間外労働
    • ・1日単位で計算した時間外労働を除き、1週間40時間を超える時間をカウントする
  3. 変形期間全体の時間外労働
    • ・1日単位、1週間単位で計算した時間外労働を除き、対象期間の法定労働時間の総数を超えた時間をカウントする

このように、変形労働時間制では段階的な確認や複雑な計算が必要となるため、手作業での管理には限界があります。そのため、正確性と業務効率を確保する観点から、勤怠管理システムの導入が強く推奨されているのです。

所定労働時間を変更して相殺はできない

変形労働時間制は、事前に計画された労働時間に基づいて運用される制度です。
特定の日に1日8時間、特定の週に1週40時間を超えて働くことができる制度となり、特定の日の所定労働時間を10時間とするといった1日や1カ月、1年といった期間ごとに異なる労働時間をあらかじめ決めることができます。

ただし、特定の日に「今日は忙しいから10時間働かせよう」と従業員に労働させ、後日「今日は時間に余裕があるから6時間で切り上げてもらい、以前の残業を相殺しよう」といった所定労働時間を変更する運用は原則として認められません。変形労働時間制における所定労働時間は、労使協定や就業規則に基づいてあらかじめ特定の日に特定された労働時間であるため、企業側が一方的に、または事後に変更して、法定労働時間の総枠を超えた時間外労働を相殺することは違法となります。

例えば、所定労働時間を1日9時間と定めた日に10時間労働した場合、所定の9時間を超えた1時間は、1日単位の計算方法で割増賃金の支払いが必要です。この1時間分の残業を、後日所定労働時間より短い労働をさせたからといって、相殺することはできません。
また、1日10時間労働と設定されている日に有給休暇を取得した場合、その日は10時間働いたものとしてカウントするのが原則です。ここを誤って一律8時間として計算してしまうと、不足分を別の日に働かせるといったトラブルにも発展しかねないため、注意が必要です。

相殺が認められない理由として、変形労働時間制はいつ、何時間働くのかを事前に確定させておくことが条件であるためです。そして企業には割増賃金率を支払う義務があります。相殺することで帳尻を合わせても、本来支払うべき割増賃金を支払っていないとみなされ、後々賃金の未払いとして、従業員とのトラブルにつながる可能性もあります。

相殺を自由に認め、会社が「今日は忙しいから2時間残業で、明日2時間早く帰ってもらおう」というような当日の気分で労働時間を操作してしまうと、変形労働時間制の業務の波に合わせて計画的に働くという本来の趣旨も変わってきてしまうため、認められていないのです。

変形労働時間制の残業時間の計算方法

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1カ月単位の場合

1カ月単位の変形労働時間制における時間外労働は、前述の「日ごと」「週ごと」「変形期間全体」の3段階で判断し、計算する必要があります。
以下は1ヶ月の所定労働時間が172.0時間(法定労働時間177.1時間)の場合のケーススタディです。表を参考に、時間外労働の対象となる判断基準を確認していきましょう。

1週間

所定労働時間40時間
曜日 所定労働時間 実労働時間 実労働と所定労働の差 所定労働時間を超えた時間
1日(日) 休日 休日 休日 週40時間以内となるため
割増賃金加算の対象外
2日(月) 8時間 8時間 0時間
3日(火) 8時間 8時間 0時間
4日(水) 8時間 8時間 0時間
5日(木) 8時間 8時間 0時間
6日(金) 10時間 8時間 0時間
7日(土) 休日 休日 休日

2週間

所定労働時間38時間
曜日 所定労働時間 実労働時間 実労働と所定労働の差 所定労働時間を超えた時間
8日(日) 休日 休日 休日
9日(月) 6時間 6時間 0時間 範囲内
10日(火) 6時間 6時間 0時間 範囲内
11日(水) 7時間 7時間 0時間 範囲内
12日(木) 7時間 7時間 0時間 範囲内
13日(金) 8時間 9時間 1時間 時間外労働が1時間発生
14日(土) 4時間 7時間 3時間 時間外労働が1時間発生
法定内労働時間が2時間発生

3週間

所定労働時間42時間
曜日 所定労働時間 実労働時間 実労働と所定労働の差 所定労働時間を超えた時間
15日(日) 休日 休日 休日
16日(月) 6時間 6時間 0時間 範囲内
17日(火) 8時間 8時間 0時間 範囲内
18日(水) 8時間 8時間 0時間 範囲内
19日(木) 10時間 10時間 0時間 範囲内
20日(金) 10時間 11時間 1時間 時間外労働が1時間発生
21日(土) 休日 休日 休日

4週間

所定労働時間36時間
曜日 所定労働時間 実労働時間 実労働と所定労働の差 所定労働時間を超えた時間
22日(日) 休日 休日 休日
23日(月) 6時間 6時間 0時間 範囲内
24日(火) 6時間 6時間 0時間 範囲内
25日(水) 8時間 8時間 0時間 範囲内
26日(木) 8時間 8時間 0時間 範囲内
27日(金) 4時間 6時間 2時間 法定内労働時間が2時間発生
28日(土) 4時間 6時間 2時間 法定内労働時間が2時間発生

5週間

所定労働時間16時間
曜日 所定労働時間 実労働時間 実労働と所定労働の差 所定労働時間を超えた時間
29日(月) 休日 休日 休日
30日(火) 8時間 8時間 0時間 範囲内
31日(水) 7.1時間 8時間 0.9時間 1日8時間・1週40時間を超えていないが、法定内労働時間が1~4週目で発生したため、月の法定労働時間を超えており所定労働時間であっても時間外労働の扱いとなる

参考:1カ月単位の変形労働時間制|厚生労働省

1年単位の場合

1年単位の変形労働時間制でも割増賃金の基本的な考え方は、「日ごと」「週ごと」「変形期間全体」の3段階による確認を行う必要があります。ただし期間が1年と長く、特定期間を除く他の週の労働時間が48時間を超えた場合、超過分が時間外労働の対象となるため注意が必要です。
年間を通じて、労働させた時間が法定労働時間の総枠である2,085.7時間(うるう年の場合は2,091.4時間)を超えないよう管理しましょう。

1週間単位の場合

1週間単位の非定型的変形労働時間制は、日ごとなどの短い期間において繁閑に差が生じ、長いスパンでの繁閑期が予測できない一定の業種(従業員常時30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店)を対象に、1日10時間まで労働することが認められています。

ただし、ここでも1週間の所定労働時間は週40時間の範囲内でなければなりません。所定労働時間を超えた場合は、超過時間に対して割増賃金の支払いが必要です。仮に1日の所定労働時間を10時間と設定している場合は、10時間を超えた時間が時間外労働となり、割増賃金の対象となります。

フレックスタイム制の場合

フレックスタイム制は一定期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、その範囲内で労働者が始業・終業時刻を自由に決められる働き方です。

フレックスタイム制を採用しているから割増賃金が出ないというのは誤りで、清算期間(1カ月~最長3カ月)における総労働時間が法定労働時間の総枠を超過した、時間外労働に対して割増賃金が発生します。
変形労働時間制のように日や週の労働時間に上限はないため、原則として日、週ごとの時間外労働は発生せず、清算期間全体から割増賃金の対象を見ていく必要があるのです。

計算方法は以下のようになります。

割増賃金(時間外労働時間)=清算期間での実労働時間-清算期間の法定労働時間の総枠

ただし、清算期間が1カ月を超える場合は、1カ月ごとに週平均50時間を超えて労働させた時間数も、月ごとに割増賃金の対象として精算する必要があります。
フレックスタイム制は変形労働時間制とは異なり、労働時間の決定権が労働者にあるため、時間外労働に対する割増賃金の対象となるのは基本的には総労働時間の枠を超えた場合に限定されています。

変形労働時間制を導入するには

変形労働時間制は、導入する変形期間に応じて労使協定の締結や就業規則への記載といった手続きが必要となります。単に労働時間を変更するだけでは法律違反となり、残業代の未払い問題に発展するリスクも考えられるため注意しましょう。

労使協定の締結

1年単位または1週間単位の変形労働時間制を導入する場合は、必ず労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。労使協定には、対象となる労働者の範囲、変形期間、労働時間の総枠などを明確に記載し、手続きを行います。

また、1カ月単位の変形労働時間制は、労使協定の締結によって導入する方法のほか、後述する就業規則への記載によって導入することも可能です。規定を行わない場合は労使協定の締結が必要となります。

就業規則に記載

1年単位の変形労働時間制を導入するには前述のとおり労使協定の締結が必要となりますが、加えて就業規則にも記載を行う必要があります。
1カ月単位の変形労働時間制の場合は、労使協定の締結または就業規則への記載どちらかの要件を満たしていれば導入できますが、1年単位で導入を行いたい場合は労使協定の締結、就業規則への記載どちらも必要となるため、1カ月単位、1週間単位では扱い方が異なる点に注意しましょう。

わかりやすく表にまとめると以下のようになります。

就業規則への記載 労使協定の締結
1週間単位 必要ではない(記載推奨) 必要
1カ月単位 どちらかの対応が必要
1年単位 必要 必要

変形労働時間制の就業規則の記載方法

就業規則は制度を運用するにあたっての根拠となる重要な書類です。
変形労働時間制を導入する場合、記載が不十分だと制度の適法性が問われる可能性があるため、専門家に相談したり、厚生労働省のホームページを参考にしたりするとスムーズです。
種類や労働者の範囲、注意事項など導入するにあたっての押さえておきたいポイントを整理していきます。

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変形労働時間制の種類・注意点

就業規則に記載する際は、まず、どの種類の変形労働時間制を導入するのかを明確に定義し、その制度特有の労働時間設定のルールを記載します。労働基準法を遵守するため、法定の上限時間や労働日数の制限など、注意点を盛り込む必要があります。

1カ月単位の変形労働時間制の場合

1カ月単位の場合、就業規則または労使協定の締結に以下の事項を定めます。

項目 内容
対象となる労働者の範囲 全従業員、対象労働者の範囲に制限なし
上限となる労働時間の範囲 1カ月以内の期間の平均が週40時間以内(特別措置対象事業場は44時間)の範囲内であれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることができる
手続き 労使協定の締結または就業規則への記載どちらかで定める
その他定める事項
  • ・労働者の範囲と労働時間の範囲を明確に定める
  • ・変形期間および起算日を具体的に定める
  • ・変形期間各日すべての労働日と休日、始業・終業の時刻、休憩時間となる労働時間すべてを定める
注意点 特定した労働日や労働時間を原則として任意で変更することは不可

1年単位の変形労働時間制の場合

1年単位の場合は、就業規則への記載、労使協定の締結どちらも必要となります。
定める事項は以下となります。

項目 内容
対象となる労働者の範囲 全従業員、対象労働者の範囲に制限なし
上限となる労働時間の範囲 1カ月を超え1年以内の期間を平均して1週間の労働時間が40時間を超えない範囲内であれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることができる

労働日数は上限:原則280日
労働時間の上限:1日10時間、1週52時間
連続して労働させる場合に日数の上限:6日
手続き 労使協定の締結、就業規則への記載どちらも必要
その他定める事項
  • ・変形期間および起算日を具体的に定める
  • ・変形期間各日すべての労働日と休日、始業・終業の時刻、休憩時間となる労働時間すべてを定める
  • ・特定期間
注意点 特定した労働日や労働時間を原則として任意で変更することは不可、1年と長期での運用となるため運用途中での再確認など、労働基準監督署の調査で指摘が入らないよう注意が必要

1週単位の非定型的変形労働時間制の場合

1週間単位の場合は、就業規則への記載は不要となり、労使協定の締結は必要です。
定める事項は下記となります。

項目 内容
対象となる労働者の範囲 従業員常時30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店の事業のみ
上限となる労働時間の範囲 1週間の労働時間40時間の範囲内で、1日最長10時間を上限に設定し、従業員に労働させることができる
手続き 労使協定の締結が必要
その他定める事項
  • ・変形期間および起算日を具体的に定める
  • ・変形期間各日すべての労働日と休日、始業・終業の時刻、休憩時間となる労働時間すべてを定め、従業員へ通知する時期を規定する
注意点 労使協定の締結が必要なため、労働基準監督署への届け出が必要

フレックスタイム制の場合

フレックスタイム制の場合は、就業規則への記載と労使協定の締結が必要となります。
労働時間の決定権が異なるといった大きな違いはありますが、変形労働時間制の一種となるため、ここでも定める事項や注意点を確認していきます。

項目 内容
対象となる労働者の範囲 全従業員、対象労働者の範囲に制限なし
上限となる労働時間の範囲 一定の清算期間において、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で従業員が日々の始業時刻と終業時刻を自由に決定する
清算期間での1週間の労働時間を40時間の範囲内とし、この40時間を超える部分は時間外労働として割増賃金の支払い対象となる
手続き 労使協定の締結、就業規則への記載どちらも必要
その他定める事項
  • ・労働者の範囲と清算期間
  • ・総労働時間
  • ・コアタイム
  • ・フレキシブルタイム
  • ・スーパーフレックスタイムの有無
注意点 清算期間が1カ月を超える場合は、月ごとの平均労働時間にも週50時間以内に収める必要がある

就業規則の記載例

就業規則とは、会社が従業員との約束を規定した文書のことを指します。
変形労働時間制を記載する際は、変形期間の種類と労働時間、休憩時間の定めを明記する必要があります。記載が不十分な場合、制度の適法性が問われるだけでなく労務管理上のトラブルにつながるリスクも考えられるため、注意が必要です。

では変形労働時間制を導入する場合、どのように就業規則へ記載したらよいのか厚生労働省が公開している内容を参考に確認していきましょう。

1年単位の変形労働時間制の場合

(労働時間及び休憩時間)
  • 第19条 労働者代表と1年単位の変形労働時間制に関する労使協定を締結した場合、当該協定の適用を受ける労働者について、1週間の所定労働時間は、対象期間を平均して1週間当たり40時間とする。
  • 2 1年単位の変形労働時間制を適用しない労働者について、1週間の所定労働時間は40時間、1日の所定労働時間は8時間とする。
  • 3 1日の始業・終業の時刻、休憩時間は次のとおりとする。
    • ①通常期間
      始業・就業時間 休憩時間
      始業 午前 分から分まで
      就業 午後
    • ②特定期間(1年単位の変形労働時間制に関する労使協定で定める特定の期間をいう。)
      始業・就業時間 休憩時間
      始業 午前 分から分まで
      就業 午後
    • ③1年単位の変形労働時間制を適用しない労働者の始業・終業の時刻、休憩時間は次のとおりとする。
      始業・就業時間 休憩時間
      始業 午前 分から分まで
      就業 午後
(休日)
  • 第20条 1年単位の変形労働時間制の適用を受ける労働者の休日については、1年単位の変形労働時間制に関する労使協定の定めるところにより、対象期間の初日を起算日とする1週間ごとに1日以上、1年間に日以上となるように指定する。その場合、年間休日カレンダーに定め、対象期間の初日の30日前までに各労働者に通知する。
  • 2 1年単位の変形労働時間制を適用しない労働者の休日については、以下のとおり指定し、月間休日カレンダーに定め、対象期間の初日の30日前までに各労働者に通知する。
    • ① 日曜日(前条第3項第2号の特定期間を除く。)
    • ② 国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)
    • ③ 年末年始(12月日~1月日)
    • ④ 夏季休日(日~日)
    • ⑤ その他会社が指定する日

参考:モデル就業規則について|厚生労働省

1カ月単位の変形労働時間制の場合

1カ月単位の変形労働時間制(変形期間は2週間)を活用しつつ、隔週での週休2日制で、毎日の所定労働時間を7時間15分とすることにより、週40時間労働制を実施する場合の規程例です。

(労働時間及び休憩時間)
  • 第19条 1週間の所定労働時間は、日を起算日として、2週間ごとに平均して、1週間当たり40時間とする。
  • 2 1日の所定労働時間は、7時間15分とする。
  • 3 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合において業務の都合によるときは、が前日までに通知する。
    始業・終業時間 休憩時間
    始業 午前 分から分まで
    就業 午後
(休日)
  • 第20条 休日は、次のとおりとする。
    • ① 日曜日
    • 日を起算日とする2週間ごとの第2 土曜日
    • ③ 国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)
    • ④ 年末年始(12月日~1月日)
    • ⑤ 夏季休日(日~日)
    • ⑥ その他会社が指定する日
  • 2 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。

参考:モデル就業規則について|厚生労働省

フレックスタイム制の場合

フレックスタイム制は就業規則等に、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることを定めることとされています。
厚生労働省は以下の記載例を公開しているため、参考にしてみてください。

就業規則の例

(適⽤労働者の範囲)
  • 第○条 第○条の規定にかかわらず、営業部及び開発部に所属する従業員にフレックスタイム制を適⽤する。
(清算期間及び総労働時間)
  • 第○条 清算期間は1箇⽉間とし、毎⽉1⽇を起算⽇とする。
  • ② 清算期間中に労働すべき総労働時間は、154時間とする。
(標準労働時間)
  • 第○条 標準となる1⽇の労働時間は、7時間とする。
(始業終業時刻、フレキシブルタイム及びコアタイム)
  • 第○条 フレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。ただし、始業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午前6時から午前10時まで、終業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午後3時から午後7時までの間とする。
  • ② 午前10時から午後3時までの間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、所属⻑の承認のないかぎり、所定の労働に従事しなければならない。
(その他)
  • 第○条 前条に掲げる事項以外については労使で協議する。
  • 始業・就業時刻を従業員の自主的決定に委ねる旨を定める必要があります。

参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手続き|厚生労働省

変形労働時間制を導入する場合の注意点

変形労働時間制は、繁忙期に応じて労働することで年間の労働時間の短縮を図ることができるという柔軟な働き方を実現する手段の一つです。
管理をするうえで間違えることのできない法定労働時間の上限や時間外労働の計算について、注意点を理解していきましょう。

所定労働時間が法定労働時間の上限を超えていないか

変形労働時間制では、変形期間を平均して週40時間以内という法定労働時間の総枠を超えない範囲で労働しなければなりません。
1年単位と1週間単位では1日の労働時間は最大10時間、1年単位の1週間の労働時間は最大52時間、そして対象期間においての連続勤務の日数は原則6日までと定められています。
必ず暦日数に応じた法定上限を確認しながら、シフトを組むようにしましょう。

残業時間は就業規則に基づいて計算する

就業規則・労使協定で規定した事前の計画と実労働時間に基づいて計算していきます。
前述の日ごと、週ごと、期間全体という3段階のチェックを、就業規則に定められたルール通りに正確に計算し、リスクが発生しないようにしましょう。

派遣社員に変形労働時間制を適用する条件とは

派遣社員に変形労働時間制を適用する場合、その条件は「派遣先」ではなく「派遣元(派遣会社)」の就業規則や労使協定に基づきます。

派遣先で変形労働時間制が導入されていても、派遣元の36協定や就業規則に変形労働時間制の規定がなければ適用できません。派遣先は、派遣契約を結ぶ際に派遣元が変形労働時間制に対応しているかを確認し、契約書にその旨を明記する必要があります。

  1. 残業を依頼することが想定されている場合は、派遣元と労働者間で労使協定の締結が必要
  2. 派遣先が導入している変形労働時間制に関する規定が就業規則に定められていること
  3. 派遣社員に対しても、変形期間、起算日、各日の労働時間などを事前に明確に通知しなければならない。これらの手続きを踏まずに派遣先の一方的な都合で労働時間を変形させることはできない
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変形労働時間制の導入と運用において、ハードルを高く感じてしまう部分が正確な労働時間の集計と残業代計算です。日単位、週単位、月単位と何段階にもわたる判定基準を、手作業や簡易的な表計算ソフトで管理し続けるのは非常に煩雑な作業となります。

クロノスの勤怠管理システムは、1か月単位や1年単位の変形労働時間制はもちろん、フレックスタイム制などの多様な働き方に標準機能で対応することが可能です。法改正にも自動アップデートで迅速に対応し、複雑な割増賃金計算もミスなく自動化。人事・労務担当者の工数を大幅に削減しながら業務効率化と企業のコンプライアンス遵守をサポートします。

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まとめ

変形労働時間制は、業務の繁閑に応じて労働時間を効率的に配分することができます。
人件費の最適化や生産性の向上などメリハリのある働き方を実現しやすくなる一方で、労働時間など残業代の計算が複雑になりやすい制度です。
特に1年単位の制度は、労働時間の上限として1日10時間、1週では52時間と定められており、期間も長くなるため期間の途中で計算が誤ってしまうと後々のリスクにも繋がりかねません。しかし、この変形労働時間制は勤怠管理システムで対応することも可能です。

制度を導入する際には、労使協定の締結または就業規則への明確な記載が必要となりますが、変形期間ごとに扱いが異なるため注意しながら所轄の労働基準監督署へ提出し、就業規則に定めたうえでの社内周知を徹底するなど、会社と従業員双方にメリットのある運用を行いましょう。

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