フレックスタイム制とは?
制度の仕組み、メリット・デメリットを徹底解説

クロノス広報チーム

公開日:2026.01.13、更新日:2026.01.20

働き方改革の推進により、従業員のワーク・ライフ・バランスの向上や生産性向上を目指す企業が増えています。その中で、多くの企業が注目しているのが「フレックスタイム制」です。

導入を検討しているが具体的な仕組みが把握できていないという企業担当者の方もいれば、自由な時間に働けるイメージはあるけれど、実際のルールやメリット・デメリットがわからないといった従業員の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、フレックスタイム制の基本的な仕組みから、導入の具体的な手順、そして成功させるための注意点までを解説します。柔軟な働き方を実現し、生産性向上を目指すための知識を深めていきましょう。

フレックスタイム制とは何か

フレックスタイム制は、一定の期間について、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業時刻と終業時刻を自由に決定できる制度です。
通常の勤務制度、例えば固定時間制では、企業の定める所定労働時間(例:午前9時から午後5時まで)に従って勤務することが義務付けられています。

フレックスタイム制では、1ヶ月などの清算期間内で総労働時間を満たすことが目的となり、日々の労働時間は従業員自身の裁量で決定します。つまり、定時勤務制が「いつ働くか」を固定するのに対し、フレックスタイム制は「いつ働くか」を個人の裁量に任せる点に大きな違いがあるのです。
従業員は仕事とプライベートを両立しやすくなり、ライフスタイルに合わせた働き方を実現しやすくなるというメリットがあります。

フレックスタイム制の導入目的は?

フレックスタイム制を導入する主な目的は、従業員のワーク・ライフ・バランスの向上と、それに伴う企業の生産性向上です。

従業員側にとっては、通勤ラッシュを避けた出勤や、私的な用事、通院などにあわせて勤務時間を柔軟に調整できるため、仕事へのモチベーション向上につながります。一方、企業側にとっては、従業員が最も集中できる時間帯に働けることで、効率の良い業務遂行が期待できるため、制度を導入することで優秀な人材の確保や離職率の低下にも寄与し、企業競争力を高める手段の一つにもなります。

フレックスタイム制の導入が多い業界・職種

フレックスタイム制の導入は、主にIT・通信業、専門・技術サービス業(コンサルティング、デザインなど)、マスコミ業界などが多いようです。

これらの業界が適している理由としては、まず業務の特性が挙げられます。ITエンジニアやデザイナーの業務は、顧客対応や特定の会議時間を除き、個人で集中して進めるタスクが多いため、他者との連携時間が厳密に固定されていなくても業務が成立しやすいからです。
特にIT業界では、開発の進捗やプロジェクトのフェーズによって必要な作業時間が変動しやすいため、個々の裁量でメリハリをつけて働けるフレックスタイム制との相性がよいといえるでしょう。

また、創造性や高い専門性が求められる職種では、従業員が最も集中できる時間帯に作業することで、生産性やアウトプットの質が向上しやすいというメリットも大きく、積極的な導入が進んでいます。
しかし近年では、フレックスタイム制を導入している企業でもすべての部署が制度の対象とはならず、オフィスワーク主体の部署や管理部門など、一部の職種に限定して導入する企業も増えているようです。

フレックスタイム制の仕組み

フレックスタイム制の仕組みの核となるのは、清算期間という単位で労働時間を管理することです。この期間内で、あらかじめ定めた総労働時間を満たすように、従業員が始業・終業時刻を決定します。
ここからは、フレックスタイム制の具体的な仕組みと、労働時間の分類について詳しく解説していきます。

清算期間を決める

フレックスタイム制では使用者と従業員の労使協定によって清算期間を定めます。ここでいう清算期間とは従業員が労働すべき総労働時間(所定労働時間)を定める期間のことを指し、従業員は清算期間の間にこの総労働時間を満たすよう働きます。
例えば清算期間が1ヶ月で、ある日の労働時間が短かったとしても、同じ清算期間内の別の日に長く働くことで帳尻を合わせることできるようなイメージです。

また、清算期間は2019年4月の法改正で最長3か月を上限に延長されたため、繁忙期や閑散期などのバランスがとりやすく、繁忙期の波にも対応しやすくなりました。
もし総労働時間に満たなかった場合は、その不足分を翌清算期間に繰り越したり、賃金を減額したりする対応が必要となってしまいます。総労働時間を超えて働いた場合は、その超過分は時間外労働として割増賃金の支払い対象となる点に注意しましょう。

コアタイム|必ず勤務しなければいけない時間帯

コアタイムとは、従業員が必ず勤務していなければならない時間帯のことを指します。
日々の始業時刻と終業時刻を自由に決定できるフレックスタイム制ですが、コアタイムが定められている場合、従業員はその時間帯必ず勤務していなければなりません。
例えば10時~15時といった形で設定されている場合、この時間帯は、会議やチームメンバーとの連携、顧客対応など、業務上、全従業員が揃う必要がある時間として設定されるのです。

コアタイムは任意となり必ず設けなければならないものではないため、コアタイムのないスーパーフレックスタイム制を採用している企業もありますが、設けることで会議時間を調整しやすくなるなどのメリットもあります。
柔軟な働き方を認めつつも、チームとしての協調性を維持し、業務の滞りを防ぐ役割を担っているのが特徴といえるでしょう。

フレキシブルタイム|勤務時間を自由に決められる時間帯

フレキシブルタイムとは、従業員が始業時刻と終業時刻を自由に決定できる時間帯のことを指します。
例えば「始業時刻は午前7時から午前10時までの間」「終業時刻は午後3時から午後7時までの間」で設定したと仮定します。
この時間帯は従業員自身の裁量で自由に決定できる時間帯であるため、この時間内であれば、いつ業務を開始し、いつ切り上げても中抜けをしても問題ありません。

コアタイムと同様に任意で設けることが可能ですが、一般的にはコアタイムの前後に設定することが多いでしょう。
従業員が自分自身のライフスタイルや体調に合わせて、最も効率の良い働き方を選択できるため、ワーク・ライフ・バランスの向上に直結するのが最大の特徴です。高い自己管理能力が求められる側面もありますが、主体的な働き方を促進するうえでは重要な要素といえます。

スーパーフレックスタイム|コアタイムのない働き方

前述ですこし触れましたが、近年注目を集めているスーパーフレックスタイム(またはフルフレックス)とは、コアタイムを一切設けず、一日のすべての勤務時間を従業員の裁量に委ねる働き方です。
この制度では「必ず勤務しなければならない時間」が存在しないため、一日の労働時間を数時間に抑えたり、逆に集中して長時間取り組んだり非常に柔軟性のある働き方ができます。

個人の裁量が非常に大きいため、成果を出しやすい時間帯を選んで働けるというメリットもありますが、その分、チーム内での情報共有や進捗管理には工夫が求められます。
また、清算期間や総労働時間などの基本的な考え方はフレックスタイムと変わりません。極端な勤務の偏りや、チーム内の連携不足が生じないよう社内でのルール作りが重要と言える働き方です。

フレックスタイム制のメリット・デメリットについて

フレックスタイム制は従業員によって始業時刻と終業時刻を自由に設定できるため、従業員の働く時間がバラバラになります。以下では、企業と従業員双方で存在するメリットとデメリットについて解説していきます。

メリット

従業員のワーク・ライフ・バランスの観点から見ると、フレックスタイム制には大きなメリットがあるといえます。なぜなら、生活と仕事の調和が取りやすくなるからです。

始業時刻と終業時刻を個人の裁量で設定することができるため、通勤ラッシュを避けられる、役所への手続きや通院といった私的な用事に合わせて出勤時間を調整できるなど、仕事とプライベートのバランスをとることができます。
そして集中力の高い時間帯での勤務が可能なため、夜型・朝型など個人のバイオリズムに合わせて最も生産性の高い時間帯に集中して働くことができ、結果として仕事の生産性向上も期待できるでしょう。

また、企業としても繁忙期と閑散期でならすことができるため、無駄な残業時間を削減できるなどのメリットもあり、柔軟な働き方を採用している企業であることを採用の場面でもアピールポイントとして訴求することができます。

デメリット

一方で、従業員の管理、コミュニケーションの観点から見るといくつかのデメリットが考えられます。
まず、管理部門の負担増加です。清算期間の総労働時間管理や残業時間の計算が複雑化するため、人事や労務部門での勤怠管理が煩雑になりがちです。コアタイムに従業員がしっかりと労働しているかのチェックも欠かせません。

そして、チーム内のコミュニケーションの難しさもデメリットとして挙げられるでしょう。コアタイムがない場合や短い場合、メンバーが揃う時間が限定されるため、会議や打ち合わせの日程調整に手間取ったり、突発的な相談がしづらくなったりする場面も多くなってしまうといったことも考えられます。

また、従業員側のデメリットとしては、自己管理が苦手な場合、労働時間の過不足が発生しやすくなります。特に、清算期間の終盤に労働時間が不足していることに気づき、急な長時間労働が発生するといった事態も起こり得ます。さらに、顧客や取引先がいる職種では、相手の勤務時間と合わないために業務が停滞するリスクにも考慮が必要です。

フレックスタイム制の導入事例

では、実際に導入している企業はどのような効果を得ているのでしょうか。ここでは、制度の柔軟性を活かして現場の課題解決を実現した、製造業における具体的な事例をご紹介します。

【導入背景】

  • ・精密機器メーカーのB社では、製品開発サイクルの短縮に伴い、研究開発部門における柔軟な働き方の実現が急務となっていた。
  • ・実験の進捗によって勤務時間が不規則になりやすく、画一的な定時勤務では業務効率が上がらないことや、専門性の高い技術職の離職が大きな課題に。
  • ・そこで、開発部門を対象にフレックスタイム制を導入。実験の待ち時間やデータの分析作業に合わせ、従業員自身が最適な始業・終業時間を選択できる環境を構築。

【導入効果】

  • ・業務の中だるみが解消されて一人ひとりの生産性が向上しただけでなく、育児や介護と両立するエンジニアの離職防止にも成功。
  • ・優秀な技術人材の確保と定着という面で、大きな成果を上げる。

フレックスタイム制を導入する際の注意点

このように、制度を導入することでさまざまなメリットやデメリットが挙げられます。
以下では、フレックスタイム制をスムーズに導入し、運用するために必要な手順と注意点について解説していきます。

目的を明確にする

フレックスタイム制を導入する際は、「なぜ導入するのか」という目的を明確にすることが重要といえます。

導入目的が「従業員の満足度向上」なのか、「生産性の向上」なのかによって、清算期間の長さやコアタイムの有無の設定が変わってきます。
目的を明確にすることで、自社の業務内容や組織文化に、本当にフレックスタイム制が適しているのかを判断する基準となり、制度設計の方針が定まります。このプロセスを怠ることで制度だけが形骸化し、かえって現場の混乱を招くといった事態は避けましょう。

就業規則の規定と照らし合わせる

フレックスタイム制を導入する際は、労働時間に関する規定が変わるため、就業規則の作成または変更が必須となります。
就業規則に対象となる従業員の範囲、清算期間、コアタイム、フレキシブルタイムなど、具体的な制度内容を明記しなければなりません。コアタイムやフレキシブルタイムを設ける時間帯も記載する必要があります。

また、就業規則の変更を行った場合は、管轄の労働基準監督署への届け出が義務付けられているため、この手続きを忘れないようにしてください。

労使協定を結ぶ

フレックスタイム制の導入にあたっては、具体的な運用ルールを定めるため、労働組合または労働者の過半数を代表する者(労働者代表)と労使協定を結ぶことが義務付けられています。

労使協定には、対象となる労働者の範囲や清算期間、清算期間における総労働時間、標準となる1日の労働時間、コアタイムおよびフレキシブルタイムの始業・終業時刻などを明確に記載します。労使協定で定めた内容は、管轄の労働基準監督署に届け出る必要があり、労働者との合意をもって労働時間に関するトラブルを未然に防ぎ、制度の適正な運用を担保することが重要です。

従業員へ周知する

フレックスタイム制は柔軟な働き方ができるという印象で、柔軟=自由であると捉えられがちです。そのため、制度を導入する際には、従業員に対してどのような働き方が可能になるのかを、しっかりと周知することが欠かせません。

特に、清算期間における総労働時間や、コアタイムの始業・終業時刻、残業時間の精算ルールなど、給与計算に関わる重要事項については誤解が生じないよう丁寧に説明する必要があります。社内説明会や社内ポータルなどを活用し、従業員一人ひとりが制度を正しく理解し、協力を得ることが重要です。

適切に従業員の勤怠を管理できているか確認する

フレックスタイム制は、日々の出退勤時間が変動するため、従業員の勤怠管理が固定時間制よりも格段に難しくなるというデメリットがあります。

清算期間内での労働時間の過不足、残業時間の上限、深夜労働や休日労働の把握など、勤怠集計が複雑化するため、労働時間の客観的な記録を残し、法令に基づいた正確な集計を行うための勤怠管理を行う仕組みが非常に重要となります。
この管理を怠った場合は未払い賃金の発生や、法令違反のリスクが高まるため、フレックスタイム制を導入する前に管理体制を必ず準備しておきましょう。

フレックスタイム制を正しく運用するには、勤怠管理システムの導入が不可欠

フレックスタイム制は、柔軟な働き方の実現と生産性向上を期待できる魅力的な制度ですが、その運用は複雑な労働時間の集計と管理の上に成り立っています。

特に清算期間内の総労働時間の過不足や、割増賃金が発生する時間外労働の正確な把握は、手作業では極めて困難といえます。そのため、フレックスタイム制の複雑なルールに自動で対応し、労働時間の超過リスクをアラートで知らせてくれる勤怠管理システムの導入がおすすめです。

クロノスの勤怠管理システムは複雑なフレックスタイム制の各種ルールに対応。自動計算とアラート機能で法令遵守を徹底し、業務効率化と正確な勤怠管理を実現します。

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まとめ

ワーク・ライフ・バランスの向上や生産性向上を目的とした企業で導入が進んでいる「フレックスタイム制」は、定められた総労働時間と清算期間の範囲内で、従業員がフレキシブルタイムといった日々の始業・終業時間帯を個人の裁量で決定し、コアタイムが設けられている時間帯は必ず勤務しなければなりません。
そして企業がフレックスタイム制を導入するには、清算期間、フレキシブルタイムやコアタイムなどのルールを労使協定で明確に定め、就業規則に規定する必要があります。

制度を導入することでのメリットやデメリットはさまざまですが、フレックスタイム制は柔軟な働き方を推進する、ひとつの選択肢でもあります。

制度を円滑に運用するために、複雑な勤怠管理やコミュニケーションの課題を克服することも重要です。従業員への周知徹底とともに、フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムの導入検討をおすすめします。

フレックスタイム制についてよくある質問

フレックスタイム制でも有給休暇は使用可能?

フレックスタイム制でも有給休暇を使用できます。有給休暇を1日取得した場合、労使協定などで定めた「標準となる1日の労働時間」を勤務したものとして扱われます。

フレックスタイム制の採用率は?

厚生労働省の調査(令和5年就労条件総合調査)によると、フレックスタイム制を導入している企業の割合は8.3%となっています。特に大規模な企業やIT関連企業での導入が進んでいるようです。

【参考】令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況(PDF)|厚生労働省

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