稟議とは?種類や決裁までのプロセス、稟議書作成のコツをわかりやすく解説

クロノス広報チーム

公開日:2025.11.18、更新日:2025.11.18

稟議は企業や組織で重要な意思決定を行う際に、個人の判断では決定できない事柄について意思決定に用いる仕組みのことを指します。
複数の視点から確認することで、組織全体の合意形成を支える大切な役割を担っています。

しかし、その仕組みや目的、メリットなどを理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。

本記事では、ビジネスの場でよく耳にする稟議について一般的な流れや種類、電子化するメリットなどを解説していきます。

稟議とは

稟議(読み方:りんぎ)とは、企業や組織で重要な意思決定を行う際に個人の判断では決定できない事柄について、ボトムアップで関係者の承認を順に得ていく内部手続きのことを指します。
ビジネスシーンでは稟議を回覧して承認を得たら「稟議を上げる」「稟議にかける」、承認が下りたら「稟議が下りる」「稟議が通る」といった言い換えで表現されています。

企業では日々業務を行うなかで様々な意思決定が行われていますが、この意思決定を個人の判断で決定するわけにはいきません。
稟議を行うことで意思決定の透明性は高まり、複数の視点から確認できるようにすることで、組織全体の合意形成を支える大切な役割を担うのです。

組織全体で方向性や統制を取るためにも、健全かつ効率的な運営を実現するために稟議という仕組みが重要といえます。

稟議を実施する背景

稟議を実施する背景には、組織運営をより円滑にさせながら、意思決定の質を高める目的があります。
提案内容を文書化して複数の承認者が確認することで、内容の妥当性やリスクを多角的に検証できるため、意思決定の精度向上につながるでしょう。

個人の判断では決定できない細かな事柄が発生した場合、関係者全員の時間と労力を使用して都度会議の場を設けるのは、タイムパフォーマンスの面でも効率的とは言えません。

そのため、会議に費やす時間を短縮しながら効率的な意思決定を行うためにも、事前に稟議という形の文書で、合意形成を進めましょう。
そうすることで承認の経緯が記録として残り、後のトラブル防止やリスクの回避にも役立ちます。

「決裁」との違い

混同されがちな稟議と決裁は、会社によって使い方の異なるケースもありますが、2つの意味は異なります。

稟議は、提案内容を文書化し、関係者が順に承認を重ねていくプロセスを指しますが、決裁はその最終段階で、最終権限を持つ上司や経営者が内容を確認し、正式に承認する作業そのものを指します。

つまり、稟議は複数の承認者による合意形成の流れであり、決裁はその流れの締めくくりとして最終的な意思決定を行う役割であるという特徴があります。
主体となる人物も異なり稟議は担当者や中間管理職が中心だということ、決裁は最終責任者が担うことが違いといえます。

稟議の5つの種類

稟議は目的や内容によっていくつかに分けられます。ここでは一般的に使用される5種類について解説していきます。

稟議の種類 概要
契約稟議 取引先との契約締結・契約内容変更に関する稟議
購買稟議 物品・システム・サービスを購入に関する稟議
捺印稟議 承認されている書類に対して最終的な押印をするための稟議
採用稟議 人事採用・異動・昇格に関する稟議
接待交際稟議 取引先との会食など接待に関する稟議

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1. 契約稟議

契約稟議は、業務委託やサービス利用など社外との契約を締結する際に、内容の妥当性やリスクを社内で確認し、承認するための手続きを指します。
稟議書には、契約相手先、契約内容、契約金額、期間、支払条件、契約書案などを明記しましょう。

契約稟議では大きい金額が動くこともあるため、契約内容の確認や条件が適切か、企業にとってデメリットとなるリスクがないかを慎重に確認することが重要です。

リスク回避と社内統制を目的として、基本的には法務・経理部門の確認を経て承認されていきますが、承認する前には内容を十分精査することが重要です。

2. 購買稟議

購買稟議は、備品やシステム、外部サービスなどを購入、発注する際に金額や費用対効果を社内で承認してもらう手続きを指します。
稟議書には、購入品名、数量、金額、購入理由、納期、取引先情報を記載します。見積書を添付し、相見積もりとして比較を行ったという経緯まで記載することがポイントです。

また、購買稟議の説得力を高めるには、「なぜこの購入が必要なのか」を具体的に示しましょう。市場調査や比較検討の結果など裏付けとなる情報を添えることで、目的や効果がより明確になり、承認を得やすくなります。

無駄な支出や不正を防ぐことを目的として行われる購買稟議は、目的や費用対効果が明確かつ予算との整合性に問題がなければ承認が下りていきます。

3. 捺印稟議

捺印稟議は、承認済みの契約書や申請書類などに対して、代表印を押すための最終的な承認のことを指します。

企業間で契約を開始する際には締結を行うための捺印作業が必要となるため、捺印をして問題がないかの最終承認を捺印稟議で行います。会社が正式に契約を開始する際に法的効力を発生させるための最終ステップともいえるでしょう。
稟議書には、押印する契約書の種類、提出先、押印の目的、理由など押印の必要性を明記することが大切です。

リスクや法的な問題がないか最終確認を行うことや、契約内容の再確認を行うために必要な稟議となります。

4. 採用稟議

採用稟議は、人事採用や人事異動、昇格を行う際に、採用の必要性や条件を代表や部署に承認してもらうための手続きを指します。人件費は固定費に直結し、各部門や個人が独自に採用を進めることはできないため、採用稟議を用いることが一般的です。
稟議書には、募集職種、人数、雇用形態、想定年収、採用理由、採用時期、採用背景(退職者補充・増員など)を記載しましょう。

申請内容にはいつまでに募集を行い、面接し、入社するのかといった採用スケジュールを添えると、承認側は「いつまでに人材を確保できるのか」がイメージしやすくなるため、おすすめです。

5. 接待交際稟議

接待交際稟議は、取引先との関係構築や営業活動の一環として行う接待、贈答、会食などが本当に必要かどうかを確認し、承認してもらうための稟議を指します。
稟議書には、接待相手、目的、日時、場所、参加人数、概算費用(一人あたりの単価)、支払方法などを記載します。

事業を進めるにあたって取引先や顧客との関係性を築くための接待だとしても、不適切な支出や贈答である可能性もあるため、社外対応の透明性を確保するためにも接待交際稟議は欠かせません。
承認後は領収書の提出や事後報告を行い、併せて経費精算の申請が必要となります。

企業のコンプライアンスを守るうえでも欠かせない、重要な稟議といえます。

稟議制度における会社の課題

稟議制度は意思決定の透明性を保つ一方で、承認までの時間がかかりすぎることや、責任の所在が曖昧になるなど、運用面での課題を抱える企業も少なくありません。

ここでは、稟議におけるよくある課題について説明していきます。

意思決定に時間を要する

稟議制度は、組織内での合意形成を重視する仕組みで複数の承認者を経るフローとなりますが、このプロセスが多段階にわたることで、意思決定までに時間がかかるという課題があります。

特に、関係者から多く承認ルートの複雑なケースや、上長が出張や会議で不在の場合には、稟議書が進まないといったことも少なくありません。
その結果、迅速な対応が求められる業務に支障が出て、競合他社に先を越されるといったリスクも考えられます。

スピードを重視したい現代のビジネスでは、この「決裁の遅さ」は大きなボトルネックとなりやすいため、スムーズに稟議が進むよう運用を見直すとよいでしょう。

生産性が低下する

複数人の承認を必要とする稟議制度は企業にとって重要な仕組みでありながら、上長や各関係者が内容確認や押印といった承認作業を行うため、時間と手間が発生します。

申請内容に不備があると差し戻しとなり、せっかく進んでいた稟議も最初の承認者から再度承認を得なければなりません。
特に紙で運用している場合は回覧や押印などの手間が増えるため、担当者の負担が大きくなってしまいます。

テレワークの推進の妨げになる

紙を中心とした書面での運用は、テレワークの普及に対応しづらく稟議がなかなか進まないといったケースも課題として挙げられます。

出社しないと紙の稟議が確認できないことや、押印のために出社が必要といった運用が残っていると、柔軟な働き方の妨げになってしまうため避けたいところです。

書面で稟議申請を行う場合、物理的な回覧は時間がかかるうえに紛失や改ざんリスクも考えられるため、昨今の働き方改革やDX化の波に乗り遅れてしまうといったことも考えられます。

稟議を上げるプロセス

稟議を上げる際のプロセスは会社や組織によって異なりますが、一般的には以下の流れで行われます。

稟議とは?種類や決裁までのプロセス、稟議書作成のコツをわかりやすく解説

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STEP1:起案

まずは起案者が稟議書を作成することからはじめます。
購入や契約、人事など社内で承認が必要な案件について、その目的や必要性、費用対効果などを整理しながら申請内容を記載し、稟議書を作成します。

この段階で重要なのは、なぜ実施するのかという“根拠”を明確に示しましょう。
根拠や裏付けが不十分だと後の承認で差し戻しされてしまうため、起案者や承認者、決裁者の手間をとらないためにも、事前に関係部署と内容をすり合わせておくとスムーズです。

STEP2:回覧

起案された稟議書は、必要に応じて関係部署や上長へ順に回覧されます。
基本的には会社規程で定められた権限に沿ってボトムアップで回覧が進んでいくことが一般的です。

ここでは内容の妥当性やリスク、コスト面など多角的な観点で回覧が行われるステップとなりますが、内容に不備や改善案がある場合には起案者へ差し戻されてしまいます。
その場合は、再度稟議内容を見直し、修正したうえで再提出を行いましょう。

STEP3:承認

回覧を経て内容が問題ないと判断されると、上長や役員からの承認が下ります。
基本的には押印やサインで承認が行われることが多く、ここで正式に「稟議内容に同意する」という意思が示され、決裁に進む準備が整います。

STEP4:決裁

最終権限を持つ役員や経営層が、稟議書の内容を確認し会社の方針に問題がなければ、最終的な承認を下します。
ここで「決裁」が下りることで稟議が通ったという状態となるため、申請した稟議内容を実行することができます。

稟議書の4つの構成要素

稟議書は、意思決定を効率的かつ円滑に進めるための重要な仕組みとなるため、「件名」「目的」「背景」「内容」の4つは必ず明確に記載する必要があります。

具体的にどのような構成となるのか、以下で解説していきます。

1. 稟議の件名

件名は、稟議の内容や事柄を一目で把握できるように簡潔に示す必要があります。
「営業部販促ツールの導入について」や「人事担当採用の件」など要点を短くまとめ、件名を読むだけで稟議書の内容がイメージできるよう工夫するとよいでしょう。

2. 稟議の目的

そして、最も重要と言えるのが目的です。
なぜこの稟議を上げるのか、実施の必要性や期待される費用対効果を明確に記載します。
例えば「業務効率化のため」「顧客対応品質の向上を目的として」といった目的に加え、どのような狙いがあるのかを端的に示しましょう。

起案者は、どのように伝えたら承認してもらえるか、期待値を持ってもらえるかを考えながら記載することもポイントです。
目的を整理しながらわかりやすく記載すること、この目的が会社の方針や経営目標とどう結びついているかを示すと、より説得力が増して承認の下りる確率が高まります。

3. 稟議の背景

目的を端的にわかりやすく示したら、稟議を起案するに至った経緯や理由、現状の課題を整理します。

例えば「既存システムでは対応できない業務が発生している」「人手不足により業務負担が増加している」といった現状を客観的に説明し、その課題を解決するための稟議であり、導入はその目的を達成するための手段だという背景を明確に示しましょう。

また、相見積もりで比較したことやリスクなどについても触れることで、稟議の必要性がより明確になります。

4. 稟議の内容

ここまでで件名という事柄、目的、背景といった理由について記載されている状態となります。
判断材料として必要な情報である一方、承認をもらうための裏付けが多くなるため、承認者が確認した際に結論はどの部分となるのかわかりにくいといった可能性も考えられるでしょう。

そのため、内容ではこれまで整理した情報に対し、「最終的に何に対して承認してもらいたいのか」という部分を明確に記載しましょう。
併せて金額やコストについても見積書を併せて提示すると説得力もあがります。

稟議をスムーズに通すための稟議書作成のコツ

稟議書をスムーズに通すためには、まず目的と効果、手段を明確にして記載することが大切です。

ただし、情報が多すぎて承認者の確認に時間を要する内容は避けたいところです。
長文になりがちな稟議書は、見出しや箇条書きを使いながら結論から順にポイントをまとめ、稟議がスムーズに進むよう伝わりやすい構成を意識しながら作成してみましょう。
例文などのフォーマットがあれば、それを用いて効率よく稟議を作成することもおすすめです。

また、主観的な意見ではなく、客観的な根拠に基づいた判断であることを示すことも重要です。
メリットとデメリットを比較したうえで、メリットが上回る理由を明確にし、想定されるリスクや最悪のケースを踏まえてもなぜ必要なのかも記載しましょう。

そして最後に、承認が下りるかどうかは起案者と承認者の信頼関係が大きく影響します。
事前に関係部署と内容をすり合わせておくことで稟議がスムーズに進むこともあるため、日頃から上長、各部署との連携と情報共有を意識することで、「聞いていない」といった認識のずれや、情報の滞りを防ぐこともできます。

稟議がスムーズに進むコツとして、ぜひ活用してみてください。

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稟議申請を電子化する4つのメリット

最近では、紙の稟議申請を電子化する会社が増えています。

導入することで承認スピードや管理効率が向上し、テレワークにも対応しやすくなるなどの効果をもつ電子稟議システムについて、4つのメリットを解説していきます。

  • ・ 稟議プロセスに要する時間を短縮できる
  • ・ コストを削減できる
  • ・ 不正や情報漏洩などのリスクを防止できる
  • ・ テレワークの導入・運用がスムーズになる

稟議プロセスに要する時間を短縮できる

電子化することで、起案から決裁までのフローをパソコンやスマートフォンから申請・承認ができるようになります。
紙の回覧や押印の手間が不要になり、承認者が外出や出張中でも使用しているデバイスから操作できるため、稟議の停滞を防げることが大きなメリットです。

また、オンライン上で稟議の回覧や承認状況が把握できるため、今どのような段階まで進行しているかをリアルタイムで確認することができます。

コストを削減できる

電子化に切り替えれば、コストを大幅に削減できるほか、書類の紛失リスクも防止できるようになります。
紙を用いた稟議では、印刷用紙・コピー代・保管スペース・拠点をまたぐ郵送代など、目に見えないコストが積み重なってしまいます。

電子化であれば過去のデータをシステム上で検索し、テンプレート化を行うことで、似た案件を入力の手間をかけず、効率的に作成することもできます。
承認者からも必要に応じて蓄積されたデータから検索して確認できるため、紙の書類を探す手間を省き、物理的なコストから人的コストを削減することが可能です。

不正や情報漏洩などのリスクを防止できる

電子化を行うと、不正や情報漏洩などのリスクを事前に回避できるようになります。
紙の稟議では、書類の紛失や情報漏洩、押印のなりすましといったリスクが考えられますが、電子化の場合はデータがシステム上に蓄積され、稟議内容を編集できるのは起案者のみに限定されている場合が多いため、不正な改ざんを未然に防ぐことができます。

また、起案日や承認日時などの更新履歴が残るため、承認経路の不正操作などリスク回避にもつながるでしょう。
システムによっては稟議内容に回覧や承認ルートをカスタマイズできるので、セキュリティ面での信頼性が高まり、社内情報も安全に管理できます。

テレワークの導入・運用がスムーズになる

稟議を電子化することで、場所を問わずに起案から決裁までの一連のフローを効率化し、テレワークや時差出勤など多様な働き方にも柔軟に対応できるようになります。

前述したように場所を問わず在宅勤務中でも迅速に対応できるため、承認や決裁スピードを維持しながら業務を滞りなく進行できる点も大きなメリットです。

時間や場所に縛られず、生産性を高められる環境を整えることは働き方改革の推進にも直結します。
より効率的で柔軟なワークフローを実現できるため、テレワークをはじめとした多様な働き方に、対応しやすい労働環境の改善が期待できるでしょう。

また、クロノスが提供するワークフローシステムは、外出先や出張先からお手持ちのデバイスでかんたんに稟議申請や承認をすることができます。

申請者と承認者、決裁者それぞれの業務を効率化する
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まとめ

稟議にはさまざまな種類があり、種類によって記載内容や回覧、承認ルートが異なることが多くなります。
起案者や承認者などそれぞれにとって効率よく稟議を進めるために、電子化を導入する企業が多い傾向があります。

クロノスの申請・承認ワークフローシステムは、外出先や出張先からお手持ちのデバイスでかんたんに稟議申請や承認ができるため、申請と承認作業をスムーズにします。
稟議の承認ルートは申請内容のカテゴリーによってカスタマイズし、上長や関係部署へかんたんに回覧することができます。

クロノスの「申請・承認ワークフローシステム X'sion(クロッシオン)」が気になった方はぜひご検討ください。

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よくある質問

稟議が必要になる場面は?

稟議が必要になる場面は以下の通りです。基本的にはこのような場面で使用されるケースが多くなります。

  • ・ 企業が取引先と新たに契約を締結、または既存の契約内容を変更する場合
  • ・ システムや外部サービスを新たに購入・導入する場合
  • ・ 稟議が最終段階まで進み、代表印による最終的な承認が必要となる場合
  • ・ 採用・異動・昇格など、人事に関わる変更が発生する場合
  • ・ 取引先やクライアントとの関係構築を目的として費用が発生した場合

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