column 業務上及び通勤中の自転車利用と会社の責任について

社労士コラム 第83回

公開日:2026.02.02、更新日:2026.02.02
業務上及び通勤中の自転車利用と会社の責任について

令和6年改正道路交通法により、令和8年4月1日から、自転車の交通違反に「交通反則制度」が導入されます。これにより、自転車についても、その交通違反のうち危険性・迷惑性が高い悪質・危険な違反について青切符により検挙されることになります。自転車の交通ルールが変わったわけではないですが、自転車の使用について今まで以上に自転車運転者の責任が問われる可能性が出てきました。

今回の道路交通法の改正が企業運営に直接的に影響を及ぼすことはありませんが、従業員が業務や通勤で自転車を使用している場合は、今一度、自転車事故のリスクに対して社内体制を確認し、従業員への注意喚起をしておくことをおすすめします。

そこで今回は、業務中の自転車事故における会社の責任について確認し、必要となる社内整備について考えていきたいと思います。

自転車事故の責任の所在

自転車事故は運転者本人が直接的な責任を負いますが、業務中の事故で第3者に損害を与えた場合、運転者本人だけでなく、会社も民法第715条の定めにより使用者責任を問われることになります。
一方、通勤中の事故である場合、通勤は「業務の執行」ではないため、原則として会社の責任は生じません。しかしながら、通勤中であっても、例えば、取引先や現場へ直行を指示した場合や通勤途上にある場所へ立ち寄り、書類の提出や備品の購入を依頼した場合など、実質的に会社の管理下にあったと評価され、客観的に「業務の執行」に当たると判断できる場合には使用者責任を問われることになります。

自転車事故であっても人身事故等、第三者への損害が大きくなる場合があります。判例通説の立場を鑑みるに、業務上の自転車事故では会社が免責されることはほとんどないのが現状です。使用者責任を追及され会社も高額な賠償を求められることになります。このようなリスクに備え、自転車利用についてルールを明確にし、周知していくなど社内整備を行うことが重要となります。

社内整備と保険加入

まずは自転車を業務利用する際のルールを決めておく必要があるでしょう。自転車を業務利用、通勤利用する場合には許可制とし、保険加入を必須とするなど基準を設け、就業規則や規程等で明確にしておくことです。また、安全運転に関する事項や事故発生時の対応についても盛り込んで周知しておくと良いでしょう。

会社が事業活動包括保険などに加入し、会社が賠償責任を負った場合に備えている場合は補償の範囲(自転車事故も対象となるか)や補償金額を再度確認しておきましょう。また、現在、多くの自治体で自転車利用者に対し自転車損害賠償責任保険等(以下、「自転車保険」という。)への加入が義務化されています。まずは自転車利用する従業員が自転車保険に加入しているか、十分な補償額のものであるかを確認しておきましょう。


車両管理規程など自動車に関する規程が整っている会社は多いと思いますが、自転車管理規程までは整えていないという会社がほとんどではないでしょうか?自転車事故の発生件数が増加しており、自転車保険加入の促進、行政処分の変更と自転車運転者の責任がより一層問われています。自転車利用については会社ごとに運用が異なるため、画一的な規定では不十分となる場合があります。弁護士や社会保険労務士など専門家と相談し、規程等で社内ルールの作成を検討することをおすすめします。

もちろん、会社や従業員が事故を起こさない努力をすることが最も重要です。この機会に安全運転や交通ルールについて掲示や勉強会などを行い、従業員一人ひとりの関心を高めることも大切です。

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