社労士コラム 第81回

令和4年就業構造基本調査によれば、過去1年間に介護や看護のために前職を離職した者は約11万人におよび、増加の傾向にあります。
一方で、令和6年雇用均等基本調査によると、介護休業を取得した者がいた事業所割合は1.9%、介護休暇を取得した者がいた事業所割合は3.6%と、両立のための制度利用は低水準にとどまっています。
このような状況をうけ、令和7年4月以降、育児介護休業法改正で介護離職防止のための雇用環境整備と制度の個別周知・意向確認等が義務付けられました。
今回は、その中から介護休業、介護両立支援制度等についての情報提供について確認していきたいと思います。
【介護に直面する前の早い段階での情報提供】
育児と違い、介護はある日突然その状況に直面することが多いです。仕事と介護の両立についての制度を十分活用できないまま介護離職とならないよう、介護に直面する前の早い段階で、会社から従業員に対し、介護休業、介護両立支援制度等に関する情報提供を行うことが義務付けられています。
◆情報提供の時期と対象者
- ①労働者が40歳に達する日(誕生日の前日)の属する年度(1年間)
- ②労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間
上記①、②のいずれかで実施
なお、正社員だけでなく、パートタイマー等の有期雇用労働者(日雇従業員を除く)も対象となります。
◆情報提供の内容
- ・介護休業に関する制度、介護両立支援制度等(制度の内容)
- ・介護休業・介護両立支援制度等の申出先
- ・介護休業給付に関すること
併せて介護保険制度についても知らせることが望ましいとされております。
◆情報提供の方法
- ・面談(オンライン面談可、ただし音声のみの通話などは面談に含まれません)
- ・書面交付
- ・FAX
- ・電子メール等(イントラネット、SNS等を含みます)
また、年度当初などに対象者を一堂に集めてまとめて実施しても差し支えないとされています。ただし、情報提供の内容や方法については上記に従う必要があります。(例えば説明会を開催し全員に書面交付するなど)
施行が令和7年4月1日ですので、実施時期を①としている場合、事業年度について別段の定めをしている場合を除き、当年度の末が施行後はじめて迎える情報提供の期限となります。実施時期を②としている場合、最も早く誕生日を迎えた4月1日生まれの方は当年度末が情報提供の期限となります。いずれにしても、施行後はじめての期限が年度末になるケースが多いのではないでしょうか?
年末は多くの業種で繁忙の時期になります。また、年始は新年度に向けての準備もはじまり気づいたらあっという間に年度末ですので、介護に直面する前の早い段階での情報提供が未実施の会社はこの機会に準備して年内に実施してしまうのがおすすめです。




