社労士コラム 第78回

令和7年度税制改正において、税制扶養の特定扶養控除の要件見直しが行われたことにより、健康保険の被扶養者認定における年間収入要件についても、一部要件が緩和されることになりました。令和7年10月1日以降、19歳以上23歳未満の方の年間収入要件が現行の「年間収入130万円未満」から「年間収入150万円未満」に変更されます。
今回は、変更点と共に被扶養者認定について再確認していきたいと思います。
被扶養者の範囲
はじめに、被扶養者に該当する範囲は以下のとおりです。
- ① 被保険者によって生計を維持されている (※別居でも可)
- ・被保険者の直系親族(父母など)
- ・配偶者(事実上婚姻関係にある者を含む)
- ・子、孫、兄弟姉妹
- ② 被保険者と生計を一にする (※同居であることが必要)
- ・①以外の三親等以内の親族
- ・事実上婚姻関係にある配偶者の父母及び子(当該配偶者が亡くなった後における父母及び子を含む)
加えて、被扶養者に収入がある場合、年齢や同居・別居などの条件に応じて収入要件が設けられています。
被扶養者の収入要件
◆年間収入
- 原則:130万円未満
- 19歳以上23歳未満:150万円未満 ※今回の変更点
- 60歳以上または障害者:180万円未満
かつ、被保険者と同居の場合は被扶養者の収入が被保険者(扶養者)の収入の半分未満であること(※)、別居の場合は被保険者(扶養者)から被扶養者への仕送り額が被扶養者の収入以上であることが要件です。
- ※被扶養者の収入が被保険者の収入の半分以上であっても、被保険者の収入を上回らないときで、生計状況を総合的に判断して被扶養者と認定されることがあります。
今回の変更点である19歳以上23歳未満の判定については、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。必ずしも扶養認定日の年齢と一致しないため注意が必要です。例えば、認定対象の方が令和7年11月に19歳の誕生日を迎える場合には、令和7年における年間収入要件は「150万円未満」となります。
ただし、令和7年10月1日以降の届出で、扶養認定日が令和7年10月1日より前にさかのぼる場合の年間収入要件は「130万円未満」で判定されます。
また、年間収入と判定される収入や、年間収入が収入要件未満かどうかの判定は今までと同様の考え方によります。収入には給与収入や公的年金等だけでなく、傷病手当金や失業給付、出産手当金などの収入も含まれ、過去の収入や将来の収入の見込みなどを考慮し、今後1年間の見込み収入での判断となります。
今回の変更で新たに被扶養者として認定される方が増える事が見込まれます。また、学生アルバイトで、年収要件の範囲に収めるために就労調整をしていた方もいると思います。従業員に早めの周知を行い、相談への対応やスムーズな手続きのため、事前の準備と確認をしておきましょう。