コラム 第53回定年、雇止め、解雇等の労働契約終了の種類

労働契約の終了には、労働者が申し出ることにより終了する辞職(自己都合による退職)の他、様々な種類があります。以下では、その種類と留意点の概要を確認します。

■ 定年退職

「定年」とは、労働者が一定の年齢に達したことを退職の理由とする制度をいいます。定年を定めることは適法ですが、60歳を下回る定年年齢は認められていません。また、65歳未満の定年を定めた場合、会社は原則として希望者全員を65 歳まで雇用する義務があります。このように、65歳未満を定年に定めている会社は、継続雇用制度の導入、定年の引上げ、定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じなければなりません。

■ 雇止め

労働契約の終期を決めずに契約すること(無期労働契約)の他に、期間に定めのある労働契約(有期労働契約)を締結することがあります。有期労働契約は、その契約期間の終期が到来することで、当然、終了となる前提ですが、契約を更新して、改めて契約を締結することも認められています。

「雇止め」は、この有期労働契約の更新を行わず、期間満了をもって退職させることを指します。雇止めの有効性は、事案ごとに異なります。トラブルに発展し、雇止めが無効とされれば、労働契約が継続していると判断されます。有期契約の終期が到来すれば、いつでも雇用契約を終了できるわけではありません。たとえば、有期労働契約を3回以上更新している場合、または、1年を超えて継続して雇用している場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、雇止めの予告をしなければなりません。

なお、使用者は、契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続して雇用している有期労働契約労働者との契約を更新する場合は、契約の実態や労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。

■ 解雇

何らかの事情で、会社(使用者)から一方的に労働契約を終了させることが「解雇」です。解雇を行う時には、客観的に合理的な理由が必要であり、社会通念上相当と認められない解雇は無効となります。

有期労働契約で働く労働者についても、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないとされており、無期労働契約の労働者の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。

■ 整理解雇

会社が、不況や経営不振などの理由により、解雇せざるを得ない場合に、人員削減のために行う解雇を「整理解雇」といいます。会社側の事情による解雇のため、①人員削減の必要性、②解雇回避の努力、③人選の合理性、④解雇手続の妥当性の4要素に照らして、整理解雇が有効か否か厳しく判断されます。

① 人員削減の必要性
倒産寸前に追い込まれているなど、整理解雇をしなければならないほどの経営上の必要性が客観的に見えとめられること
② 解雇回避の努力
配置転換、出向、希望退職の募集、賃金の引き下げその他、整理解雇を回避するために、会社が最大限の努力を尽くしてもなお人員整理以外に方法がないこと。
③ 人選の合理性
勤続年数や年齢など解雇の対象者を選定する基準が合理的で、かつ、基準に沿った運用が行われていること。
④ 解雇手続きの妥当性
整理解雇の必要性やその時期、方法、規模、人選の基準などについて、労働者側と十分に協議をし、納得を得るための努力を尽くしていること。

原則として4要素すべてを満たす必要があります。

(厚生労働省 徳島労働局HPより)

■ 退職勧奨

「退職勧奨」は、会社が労働者に退職を働きかける(勧める)ことをいいます。解雇は、会社からの一方的な労働契約の終了ですが、退職勧奨は労働者が自由意思で応じるか否かを決めるという点で、解雇とは異なります。

なお、会社が労働者の自由な意思決定を妨げるときには、違法な権利侵害に当たると判断されることがあります。また、労働者が退職勧奨に応じて退職した場合であっても、雇用保険喪失の手続きの際の離職票作成時の離職理由欄が「自己都合による退職」とはなりません。


この他、休職制度を設けた場合における休職満了等も、労働契約終了の種類の一つとなります。どのような場合に労働契約が終了となるのかは、 就業規則で明示しておく必要があります。

2023.08.02