コラム 第45回割増賃金率50%の引き上げに向けて求められる取組み

大企業ではすでに、1ヶ月60時間を超える法定時間外労働に対して50%以上の割増賃金率による割増賃金の支払いが求められていますが、いよいよ2023年4月1日より中小企業にもその適用が拡大されます。以下では、様々な注意点も含めて時間外労働が多い企業において、施行までに求められる対応を確認します。

2023年4月1日より 中小企業でも割増賃金率50%の引き上げ
  • 2023年4月1日から労働させた時間について、割増賃金の引き上げの対象になります。
    (参照:厚生労働省リーフレット「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」)

1.時間外労働の削減

2023年4月1日より、中小企業も含めた全ての企業において、1ヶ月60時間を超えた法定時間外労働に対する割増賃金率が50%以上に引き上げられます。あくまでも月60時間を超えた部分に対する割増賃金率の引き上げですが、例えば時間単価が1,500円の場合に、割増賃金率が25%から50%に変わることで1時間当たりの賃金額は1,875円(25%)から2,250円(50%)となり、引き上げの影響は決して小さいものではありません。

なお、月60時間を超える法定時間外労働が深夜労働に及んだときは、深夜労働に対する割増賃金の支払いも必要となることから、割増賃金率は75%(25%+50%)以上となります。

長時間労働の防止および1人件費の増加という観点から、企業はできるだけ時間外労働を削減しておくことが求められます。

  • 深夜・休日労働の取り扱い 月60時間を超える法定時間外労働に対しては、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
深夜労働との関係

月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%となります。

休日労働との関係

月60時間の時間外労働の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。

  • 法定休日労働の割増賃金率は、35%です。

2.人件費の確認

1.のとおり、割増賃金率の引き上げは、人件費の大幅な増加につながります。そのため、例えば過去1 年間の時間外労働の時間数が同じであった場合、人件費がどのくらい増加となるのかをしっかりと試算し把握しておくとよいでしょう。

また、人件費の内容を経営会議のような場面で共有し、現場の管理者にも人件費への影響について認識をもってもらうことで、時間外労働の削減の必要性を共通認識にすることができるでしょう。


3.36協定の取り扱い

時間外労働・休日労働に関する協定(いわゆる36協定)において、特別条項を設ける場合、限度時間を超えた労働に係る割増賃金率を記載する欄があります。

2023年4月1日以降に割増賃金率が変更となりますが、36協定には月60時間を超えた割増賃金率を記載する必要はないため、協定期間が2023年4月1日をまたぐ場合であっても、届出をし直す必要はありません。


4.所定外労働と時間外労働の違い

所定労働時間を超え、法定労働時間以下の時間を所定外労働といいます。当職のこれまでの経験上、多くの会社が所定外労働と時間外労働を区別できておらず、時間外労働が法律の求めよりも多く集計されている実態を目にします。勤怠集計を手動で行っていた時代は、所定外労働と時間外労働を区別して集計することが難しかったかもしれません。勤怠ソフトがあれば、集計の設定をしておくことで、少ない労力で時間外労働と所定外労働を区別することができますので、この機会に勤怠ソフトの導入又は設定変更を行ってみてはいかがでしょうか?

2022.11.30