コラム 第44回解雇を実施する際の留意点

雇用契約の終了には、定年退職や自己都合退職の他、解雇や雇止めがあります。この中でも、解雇を行う際には様々な注意点があり、トラブルとならないように事前に策を講じる必要があります。以下ではその内容を整理し、ポイントを解説いたします。

解雇とは、使用者(会社)からの申出による一方的な雇用契約の終了のことをいいます。使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、雇用契約を終了させることはできません。

1.懲戒解雇

従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに懲戒処分として行う解雇のことをいいます。ただし、就業規則(懲戒解雇規程)や雇用契約書にその要件を具体的に明示しておくことが必要です。

しかし、懲戒解雇は非常にハードルが高いと認識しておく必要があります。懲戒解雇事由に該当するからといって、直ちに懲戒解雇が有効になるかというとそうではありません。懲戒処分を実施するための正しい手順に従って、懲戒処分の妥当性を検証したうえで、処分内容を決定する必要があります。

2.整理解雇

次に整理解雇について解説いたします。使用者が不況や経営不振などの理由により、解雇せざるを得ない場合に人員削減のために行う解雇をいいます。以下の事項に照らし合わせて整理解雇が有効か厳しく判断されます。

  • ①人員削減の必要性
    人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいているか
  • ②解雇回避の努力
    配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のための努力をしているか
  • ③人選の合理性
    整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であるか
  • ④解雇手続きの妥当性
    労働者等に対して、解雇の必要性とその時期、規模、方法について納得を得るために説明を行っているか

3.普通解雇

懲戒解雇、整理解雇以外の解雇のことを「普通解雇」と呼びます。従業員に非行・違法行為がある場合や、従業員の能力不足、業務が原因ではないけがや病気などによる解雇がこれに当たります。3種類の解雇のうち、実務上最も多いのが普通解雇です。

解雇予告について

解雇を行うときは、どんなに合理的な理由があったとしても、少なくともその30日前に解雇の予告をし、予告を行わない場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。

解雇予告は口頭でも有効ですが、口約束では後々にトラブルの原因となりますので、解雇する日と具体的理由を明記した「解雇通知書」を作成することが望ましいでしょう。

  • 解雇予告が不要な場合 「従業員の責に帰すべき理由による解雇」や「天災地変等により事業の継続が不可能となった場合」には、解雇予告や解雇予告手当の支払いをせずに即時に解雇することができます。ただし、解雇を行う前に労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けなければなりません。
    また、次のような場合は解雇予告そのものが適用されません。ただし、下記欄の日数を超えて引き続き働くことになった場合は解雇予告制度の対象となります。
    試用期間中の者14日間
    4カ月以内の季節労働者その契約期間
    契約期間が2ヶ月以内の者その契約期間
    日雇い労働者1ヶ月

退職勧奨について

雇用契約の終了の1つで解雇と似ているものとして 「退職勧奨」 がありますが、これは使用者が労働者に対して退職を勧めることを言い、労働者の意思とは関係なく会社が一方的に契約を解除する解雇とは異なります。労働者が自由意思によりその勧奨に応じる場合は問題となりませんが、使用者が労働者の自由な意思による決定を妨げる勧奨は、違法な権利侵害に当たると判断される場合もあるので慎重に進める必要があると言えるでしょう。

(参照:「しっかりマスター労働基準法~解雇編~」)

2022.11.01