コラム 第36回シフト制で労働日や労働時間を決定・変更する際の留意点について

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労働契約では、労働日や労働時間を予め確定させた上で契約を締結することが原則です。しかし、契約の締結時点では確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務割や勤務シフト等において初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような、いわゆる「シフト制」により労働契約を締結することも多く見られます。

このシフト制に関連し、厚生労働省は「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(以下、「シフト制による留意事項」という。)を取りまとめ、公表しました。今回はこの中から、特に確認しておきたいポイントについて見ていきましょう。


  • 1. 労働条件の明示と始業・終業時刻

    会社は労働契約の締結の際、労働者に対して「始業及び終業の時刻」や「休日」に関する事項等を書面により明示する義務があります。シフト制の場合、具体的な労働日や労働時間等を「シフトによる」と記載しているケースがありますが、既に始業や終業時刻が確定している日についてはこの記載では足りず、労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業や終業時刻を記載した上で、一定期間のシフト表をあわせて労働者に交付する等の対応が必要です。

    この他、シフト表を労働者に通知する期限や方法といった、シフトの作成・変更・設定などについても労使で話し合ってルールを定めておき、労働者に分かるようにします。シフトの作成・変更のルールは、就業規則等で一律に定めることも考えられます。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、「始業及び終業の時刻」や「休日」に関する事項などについて、就業規則を作成し、管轄の労働基準監督署に届け出なければなりません(労基法第89条第1号等)。

  • 2.労働契約の定めと労働日・労働時間

    働者が労働契約の内容の理解を深める為に、労働日や労働時間等について、基本的な考え方を予め労働契約で決めておくことが望まれます。例えば、以下のような事項について、会社と労働者で話し合い、合意しておくことが考えられます。

    • 一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数・時間数・時間帯
      [例] 毎週月・水・金曜日から勤務する日をシフトで指定する
    • 一定の期間において、目安となる労働日数・労働時間数
      [例] 1ヶ月○日程度勤務、1 週間当たり平均○時間勤務
  • 3.労働日や労働時間等の変更

    基本的に、一旦シフトを確定させた後にそのシフト上の労働日や労働時間等を変更することは、労働条件の変更にあたります。その為、会社と労働者双方が合意した上で行う必要があります。

    シフトの変更に関するルールとして、例えば、シフトの期間開始前に、確定したシフト表の労働日・労働時間等の変更を会社、労働者が申し出る場合の期限や手続等について、予め決めておくことが考えられます。

今回、シフト制による留意事項が公表された背景には、シフト制のメリットを認めつつも、会社の都合で労働日や労働時間等が設定され、トラブルとなるケースが起きていることがあります。

シフト制労働者を就労させる際にも、労働時間の上限(原則1日8時間、1週40時間、この上限を超えて働かせるには36協定が必要(労基法第32条、第36条))や1日の労働時間ごとに決められた休憩を与えること、所定労働日数・労働時間数に応じた法廷の日数の年次有給休暇の発生と取得させる義務等について対象外とはなりません。勤怠ソフト等を使用し、適切な勤怠管理をする必要があります。

シフト制を採用している会社は、この機会に適切な運用が出来ているかどうかを確認してみましょう。

2022.03.01