コラム 第35回36協定を締結・運用する上で確認すべき事項について

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年度末に向け、「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)の締結にかかる準備を始める企業も多いのではないかと思います。

そこで今回は、36協定に特別条項を設けているケースで、36協定を遵守するための実務上の注意点を見ていきましょう。


  • 1. 必要な手続き

    時間外労働が限度時間である1ヶ月45時間を超えることが見込まれる等の理由から特別条項を設ける場合、限度時間を超えて時間外労働をさせる際の手続きを定めて、36協定に記載する必要があります。この手続きは、特別条項に該当する月ごとに行います。手続き方法は任意です。

    • 「労使協議」とした場合: 事前に従業員と会社で場を設けて協議することが求められます。
    • 「過半数代表者への申し入れ」とした場合: 会社が従業員の過半数代表者へ事前に書面等で申し入れます。
  • 2.特別条項の適用回数の管理

    特別条項を設ける場合であっても、上回ることが出来ない労働時間数が設けられています。具体的には、特別条項は①から④の全てを満たす必要があります。

    • ①時間外労働が年720時間以内
    • ②時間外労働と法定休日労働の合計が月100時間未満
    • ③時間外労働と法定休日労働の合計について、2ヶ月平均、3ヶ月平均、4ヶ月平均、5ヶ月平均、6ヶ月平均が全て1ヶ月当たり80時間以内
    • ④時間外労働が月45時間()を超えることができるのは年6ヶ月まで

    3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間

  • 3.複数月を平均した時間外労働時間数

    例えば、特別条項を1ヶ月90時間と締結しており、90時間の範囲に収まっていたとしても、2.の③のとおり2∼6ヶ月平均で月80時間以内という基準があります。つまり、例えば当月に90時間の時間外労働があった場合には、その翌月は70時間以内に収めることが求められます。単月の管理のみではなく、複数月の時間数の管理も必要になります。

    また、この2∼6ヶ月の平均は、36協定の期間に縛られることなく、前後の36協定の期間を跨いだ期間にも適用されます。例えば、36協定を2022年4月1日から2023年3月31日までの1年間で締結している場合、2ヶ月平均は2022年4月と5月のみならず、2022年3月と4月でも確認されるということです。

やむを得ない理由から特別条項を締結していることもあるかと思いますが、会社としては根本的に特別条項を適用するような時間外労働自体を減らしていくよう対応していくことが必要です。特別条項を締結する場合には適切な形で行い、管理する必要があります。勤怠ソフト等を使用し、適切な管理が出来るようにしましょう。

2022.01.21