コラム 第17回社会保険の適用拡大等が盛り込まれた年金制度の改正について

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定期的に見直しが行われている社会保険制度ですが、先日閉会した国会でも「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(以下、「年金制度改正法」という)が成立しました。
これは、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり、多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、 長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的としています。
多岐にわたる改正内容のうち、特に押さえておきたい2点について見ていきましょう。


改正の注目ポイント

  • ① 社会保険の適用拡大

    社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者となる人は、適用事業所に勤務する正社員(常時使用される人)のほか、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であるパートタイマーやアルバイト等とされています(4分の3基準)。これに加え、4分の3基準に該当しない場合であっても、以下の5つの要件をすべて満たす人は、被保険者になります。

    • ①1週間の所定労働時間が20時間以上あること
    • ②雇用期間が1年以上見込まれること
    • ③賃金の月額が8.8万円以上であること
    • ④学生でないこと
    • ⑤厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の適用事業所に勤めていること

    年金制度改正法では、⑤の要件について、2022年10月に101人以上の適用事業所に、2024年10月に51人以上の適用事業所に拡大することとしています。
    また②の要件が2022年10月に廃止され、正社員と同様に「雇用期間が2ヶ月超見込まれること」 となります。

  • ② 2ヶ月超の雇用見込者の早期加入

    社会保険では一定の被保険者とならない人が定められています。そのひとつに、「2ヶ月以内の期間を定めて使用される人」というものがありますが、2ヶ月以内の雇用見込みの人であっても所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となるとされています。
    年金制度改正法では、雇用契約の期間が2ヶ月以内であっても、実態としてその雇用契約の期間を超えて使用される見込みがあると判断される場合は、最初の雇用期間を含めて、当初から被保険者になるとされました。

    原則として当初から被保険者となる具体例
    • 就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
    • 同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合
    2ヶ月超の雇用見込者の早期加入のイメージ
  • 特に社会保険の適用拡大に関しては、多くのパートタイマーやアルバイト等が新たに被保険者になる可能性があります。企業にとっては社会保険料の負担が大きくなり、新たに被保険者となる従業員にとっては手取り収入が減ることにもなります。早めに丁寧な説明をしておく必要も出てくるでしょう。
    被保険者の対象となるか否かの判断や各種計算を正しく行うためにも、勤怠管理システムや給与計算ソフトを活用し、対応していきましょう。


    2020.07.28