column 社労士コラム

2025年6月から義務化される熱中症対策

コラム 第74回

2025.05.16

厚生労働省発表の資料『令和6年の職場における熱中症による死傷災害の発生状況』によると、令和6年の職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数は1,195人にのぼり、うち死亡者は30人となっています。(令和7年1月7日時点の速報値)

職場における熱中症による死傷者数の推移
※2024年の件数は 2025年1月7日時点の速報値である。

この数年は死亡者数が高止まりしており、重篤化した多くのケースで暑さ指数(WBGT)を把握せず、熱中症の発症時や緊急時の措置の確認・周知の実施がされていませんでした。また、熱中症の発生に影響を及ぼす疾病を有している事例もみられ、医師などの意見を踏まえた配慮がなされていなかった事例もありました。

このような現状を踏まえ、2025年6月1日より改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症対策の強化について、体制整備、手順作成、関係者への周知が事業主に義務付けられます。

1.報告体制の整備と関係作業者への周知

熱中症を生ずるおそれのある作業(「WBGT28度以上、気温31度以上の環境下で連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施が見込まれる作業」とされています。)を行う際に「熱中症の自覚症状がある作業者」や「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」がその旨を報告するための体制を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知することが必要です。

2.措置の内容・実施手順の作成と関係作業者への周知

熱中症のおそれがある者を把握した場合、作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送等、熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置があります。この措置の内容と実施手順、緊急時の連絡網や緊急搬送先の連絡先や所在地等をあらかじめ事業場ごとに定め、関係作業者へ周知する必要があります。


熱中症のリスクは作業内容や作業環境によって大きく異なってきます。WBGT値を活用し、作業環境を管理しながら、現場の実状にあったフローを作成し、周知していきましょう。

また、近年暑さが厳しくなるのが早まっている印象です。6月の義務化に向けて早めに準備していきましょう。